第18話-二日酔いの朝
「あぁぁ……。飲み過ぎた。」
二日酔いに頭を抱えてベッドから身を起こす。
昨晩はウィルと部屋で飲み明かしたのだった。花嫁殿……申し訳ない……。
コンコンとノックの音が聞こえ、返事も待たずに
言うまでもなく、エドワードが部屋に入ってくるとそのままカーテンを開けて、部屋に光を入れる。
二日酔いの僕には溶けそうな程の朝日に疲れたため息を漏らした。
正直言ってまだ寝ていたい。
「まったく。婚礼を控えたイングリスの王太子を夜通し酒に付き合わせるとは。」
呆れたようにエドワードが僕を見た。僕はと言えば、シバシバと重い瞼を擦って大欠伸をしていた。
「いいじゃ無いか。晩酌くらい。」
テーブルには、ワインの空き瓶がゴロゴロと転がる。
「限度というものがございます。他国でこのように……――」
またエドワードの説教が長くなりそうだったので、僕は降参とばかりに慌てて両手を上げる。
「わかった。僕が悪かったよ。でもウィルも悪い。帰れと言っても帰らないし。そんな王太子を真夜中にどうもてなす?」
そりゃあ酒盛りしか無いだろう?と笑って言ってやると、エドワードは小さくため息を漏らした。
「今夜はイングリス国王陛下との食事会でございますが、それまではどうなさいますか?」
「ああ、今日は魔物の研究施設の書庫の立入許可を貰ったから、行ってくるよ。」
「承知致しました。食事会の身支度がございますのでお昼過ぎには戻られますように。」
「了解。」
なんやかんや小言を食らいながらも何とか外に出る口実を作った。まぁ、お目付け役は居るわけだが、そのくらいは良いだろう。
僕は、馬車の中でふふっと嬉しげに笑い、窓の外を見た。
今日は忘れずに本を持ってきた。
ゾエと友人だったら、どんな外国土産を買うと喜ぶのだろう。そもそも作者が男なのか女なのかも分からない。ゾエという名前は女性のものだが本当の姿は誰も知らないのだ。
女性ならば甘い菓子かな。男性ならやはり麦の酒かな?資料になるような異国の風景画集でも良いかもしれない。
この国に連れてきたらゾエにどんな刺激を与える事ができるだらろう。
安全に旅が出来る世の中……か。
今はまだ情勢が落ち着かないが、いつか必ずそんな世の中にしてやろう。
「ご機嫌だねぇ。久々の下街だもんな。」
馬車の向かい座っていたヤトがニヤニヤと笑いながら言う。
「いいだろう?堅苦しいのは苦手なんだよ。」
「知ってる。しかしよく許可が降りたな。」
「資料を見せて貰うだけだが。」
「それだって、相手にとっちゃ国益だろ。タダより高いもんは無いぜ?」
ヤトは大大夫か?とばかりに心配そうに顔を顰めている。
「あはは。勿論タダじゃないさ。その為の今夜の食事会だった。その前にウィリアム殿下仲良くなれてしまって、僕の希望が前倒しになってるだけだよ。」
「ふ――ん。」
ヤトが不審者でも見るようにジッと見つめてくる。僕はその何を言われるかも分からない表情に身を後ろに引く。
「な……なんだよ。」
そんな僕の表情にクククと楽しげに笑うと、ニィッと笑った。
「やっぱ、お前が国王になれば?」
「いやだね。」
ヤトの言葉に僕はきっぱりと答えたのだった。
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