推しと私と配信モノ

BuriDish

Chapter1 推しと私

第1話 推し事の始まり

 私にはかわいい妹がいる。

 ちょっと癖っ毛なふわっとした薄茶色の髪、小さなお顔に大きな瞳、小さな桜色の唇と贔屓目なしに美少女である我が妹の稀石結愛(まれいし ゆめ)


 そんなかわいい妹がいる語り部である私の名前は、稀石 しるべ。少々珍しい名前ではあるけれど、まぁそんなことはどうだっていい。

 そんな私の妹はすごい美少女なのだが体が弱いのだ、入退院を繰り返すほどに。


 そして、現在私は8歳の妹の入院している病院に向かっている。妹が退屈しないよう玩具やゲームなどを準備し、病室では持ち込んだノートPCで一緒に動画やアニメなどを見たりしていた。


 その中で妹が興味を持ったものがあった。


「わぁぁ…この女の人かわいい!キラキラしててきれい!」


 その興味を持ったものが、アイドル、である。


 このアイドルの子は人気絶頂中のアイドルで恵まれた容姿に、人を魅せるダンス、そして高い歌唱力なども持ち合わせた現アイドル業界のトップの子である。

 そんな彼女を見て妹はキラキラした瞳を画面の中で踊る少女に向けていた。


「ねぇ、おねえちゃん、結愛もあんなふうにキラキラできるかな?元気になったらこの人みたいになれるかなぁ?」


 私にとってはもう妹は気持ち的にアイドルなのだが、それはまぁさておき…素質自体は十分にあると思う。

 結愛の容姿は贔屓目はあるかもしれないけれど、画面に映っていた少女、赤石優美ちゃんにも引けを取らないと個人的には感じる。歌は…努力次第だが、妹の透き通るようなウィスパーボイスは安心感を感じる。この声は大きな武器になるだろう。

 問題は…体力、体の弱さだ。

 結愛は100メートルも歩けば息を切らす、赤石優美ちゃんのように歌いながら踊る…なんてことは現状確実に不可能だろう。それに…アイドルというものは旬が短い、ハンデを背負った状態でどこまで夢に追いつけるか…。

 そんな言葉を、キラキラした瞳をこちらに向けた結愛に向かって言うことはできず。


「うん、きっとなれる。結愛なら絶対にアイドルになれるよ。だから頑張って病気を治そうね。」


 だからまず好き嫌いを直そうねー。とかわいい妹の頭を撫でながら言う、結愛は少し苦い顔をしながらえぇーっと言いながら。優美ちゃんみたいになるんだもん頑張って食べる!と熱意を燃やしていた。かわいすぎる。


「結愛が本当にアイドルになるっていうならお姉ちゃんも全力でサポートするからね。お姉ちゃんに遠慮しないでいっぱい頼ってね?」


「うん!おねえちゃんありがとう!結愛いっぱい頑張る!病気も治すもん!」


 頑張るぞーっ!と手を振り上げる結愛の姿を見る私は、前向きに頑張る目標ができるのは良いことだと自然に笑みを浮かべていた。


 少々、妹の覚悟を甘く見ていたと、この時の私は全く理解していなかった。


―――これは家族として妹を愛し、推しのファン一号として推しを傍で見守り支え続ける。そんな私が語り部の物語である―――

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