元勇者の休息

ゆらゆらクラゲ

魔法使い

第1話 勇者だって黙秘権はあります

澄んだ空気。

美しい森。

子供達の笑い声。

自分の役割でもあった勇者という役目を終え、気軽に聞いたり見たりするのは何年ぶりだろう。

「やっと自由なんだよね」

自然に声が出るほど嬉しさが溢れてく。



僕、カヤノスは世界を脅かしていた魔王アンダリュを仲間と共に打ち倒し、世界中に祝福されながら勇者としての役目を終えた。

役目も終わったこともあり、残りの余生をゆっくりと堪能しようと田舎の森に仲間に何も言わずにひっそりと引っ越してきてはや1ヶ月。


最近では仲良くなったおばさん、ナナさんのお店のお手伝いをしながら生活している。

「カヤノスちゃん。いつもお手伝いありがとね」

「ううん、大丈夫。これくらい手伝うよ」

近所の職業が見た目とミスマッチしているおばさんのお店で商品として売る編み物を目を追えないほど速さで編んでいき一個ずつ作っていく。今思うと僕はこんなに器用だということはあまり分からなかった。

勇者時代はあまり自分のことについて考えなかったためここに来てから何もかもが新鮮である。

「そう言えばカヤノスちゃん。家は決まったかい?」

「はい。森の方なんですけど、空気が澄んでていいんです」

「いいねぇ、ここから遠いけどカヤノスちゃんだったら若いから大丈夫ね」

「そんなことないですよ」

そうだ、おばさんの言う通りおばさんのお店から少し遠い場所に家を買ったのだ。全てはアイツら……名前を言うつもりはないが、魔王を倒した時のメンバーにここの街だとバレてもいいように少しでも遠くに設定しといたのである。

「っと、そろそろ帰るよおばさん」

「また来なさいね」

正直いってあの人といると時間が経つんだよねー。もう夕方だし。



……30分後の僕はこんな呑気なことを考えている自分にファイヤーボールを打ち込みたい僕がいました。


「カヤノス……黙ってた罰としてどういう風に消滅したい?」

「せめて原型残してください」


今、僕は土下座をしながら消滅しそうなので。


___________________


「……それでなんで黙ってたの」

「説明した通りでござ「納得いってないから聞いてんの!」…すみませんでした」

えぇ、現在僕はフリーズドライで手を打ってもらい建てたばっかりの家で説明中です。

この子はシンシャで僕の仲間の魔法使いだった。赤い瞳と髪の毛が特徴的で、迷子になった時助かったなー。

「カヤノス!あんた話聞いてんの?」

「いや聞いてるよ。だから全部言ったって」

「…嘘ね」「なんでバレたの」

「あんた早く言えば終わるっていうのに早く吐きなさいよ」


いや。

「勇者でも黙秘権使ってもいいでしょ」

この後僕はシンシャによってエクスティンクションという名の消滅魔法を受け教会で生き返った後、ポイズンをかけられ教会で一日を過ごした。

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