コスモス
スルメイカ
第1話「First Case」①
一人の男が建物の中に入っていった。建物の前には、こう書かれた看板が置かれている。
「公安省」————
――――2020年代半ば、「史上最悪のテロ」と呼ばれた"自家用ジェット機特攻事件"が発生した。この事件を皮切りに、日本全国で次々とテロや重大犯罪が発生。日本の美点とされた「治安の良さ」は、過去の遺物となった。そんな国内状況を踏まえ、世論は治安維持の方向に傾いた。その結果、タカ派と称される
それにしてもこの仮庁舎はどうも苦手だ。打ちっ放しのコンクリート製の外壁、無数に取り付けられた窓。見る者に対して大きな威圧感を与える。公安省の設置には、
9時から公安省刑事局長による開省式が執り行われる。局長に任命されたのは
そんなことを考えながら歩いていると、前から一人の男がニヤニヤと不気味な笑みを浮かべながら近づいてきた。この男は
「やあ。キミ良かったね、係長になる事ができて」
沖田は皮肉を込めてそう言った。
「ええ。沖田"さん"も良かったですね、課長になれて」
そう皮肉をたっぷり込めて言い放った後、そそくさと隣を通って配属された部署に向かった。お役所らしく、自分の所属する部署名が異様に長いため、まだ覚えられていない。
そう思い、カバンから事前に配布された紙を手に取った。
「公安省刑事局第一課第三係」
やはり無駄に長い名称だ。人に呼称する時は「公安」などと言った方がいいのだろうか。
またしても考え事をしながら歩いていると、自分が配属された部署らしい所に辿り着いた。部署名も一致している。
恐る恐る中に入ると、そこには5人の男女が居た。こちらに気づくと一人が声をかけ、残りの者達も一斉にこちらを見て敬礼した。どうやら自分の部下らしい。
「私は
「私は
「自分は
「
「私は
一通り終わったため、自分の自己紹介を始めることにした。
「私は
係長と言う肩書を使ったため、より一層役職の重さが身に染みて感じられた。
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