第11章 解答

 そうか……そういう事か。とすればあいつしかいまい。美形で文武両道。そしてこいつが長年求め続けた不思議人材。

『……僕は涼宮さんのことが好きなんですよ』

 光陽園の制服を着たあいつはそう言っていたな。

 最初は愛想笑いを張り付けた、いけ好かない野郎としか見ていなかったが、今では、多少は信頼に値する奴ではないかと考えるようになっている。

 そうか……まああいつなら……。

 

「古泉か」


 一瞬キョトンとしたハルヒは、残念な出来のパチモンキャラを見るような面で、俺を見て呟いた。


「そうきたか」

「?」

「ハズレ」

「え!?」


 違うのか? しかしハルヒと俺の共通の知人などそう多くはないぞ? ま、まさか谷口か国木田ではあるまいな!?


「とう!」びしっ!

「ってえ!」


 ハルヒは大仰に溜息をつき、


「まったくあんたのアホっぷりも相当よねー。やっぱ考え直そうかしら」

「は?」


 ハルヒは指を俺に突きつけ、今までに見たこともないような凶悪な笑みを浮かべた。

 それはちょうどファウストの魂を手に入れたメフィストフェレスのような。


「アンタよ」

「……だからな、お前の冗談は悪質だと何度言えば」


 ハルヒはニヤニヤと笑っている。


「おい……笑えねえって」


 ニヤニヤ。


「……え、えーとハルヒさん?」


 ニヤニヤ。


「………………マジ、で?」

「マジよ」

「……」

「……」




「   キー   」




 

 俺の口から奇怪な悲鳴が漏れる。例えるなら猛禽類の鉤爪に捕えられた、げっ歯類の断末魔。

 ななななな何考えてんだ未来の俺!? こんな女と結婚したら今まで以上にこき使われて若くして腹上死間違えた過労死するに決まって


「なーによーキョンってばぁ! 死にそうな顔してたくせに、急に満面の笑み浮かべちゃってえ! そっかそっか、将来あたしと結婚できるのが、そんなに嬉しいってわけね!」


 阿呆。これは恐怖のあまり顔面の筋肉が強張っているにすぎん。

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