第84話 呼ばれてしまった
ミヅチに見送られ、やってきたのは近畿地方中央部だ。
けっこうな弾丸ツアーだけど、今の時代って油断してるとすーぐ状況が変わるからね。出来るだけ同じ時期に全国を見て回りたくて。
「ここらも妖怪が多いね。兵庫の辺りは人間の領域も多かったんだけど」
「ああ。しかし、四国よりも多種多様だな」
確かに。
四国は殆どが狸だったけど、こっちは狐以外にも色々いる。妖怪というか、妖怪を含む神霊の類が多い?
「龍みたいな種族もいるのね。けど、龍そのものはいない、と」
「人間が早々龍に成れるものか。あの当時龍に成れた人間はロード一人ではないか?」
確かに他の龍の話は聞かないなぁ。
思えば、私も種族変化先に龍なんてなかった気がする。
一応私はまだ、昔のspで種族変化できるんだけど。
そもそも迷宮のコアによるズルでもないとダメだったのかもね、て、お?
「なんか称号のアスタリスクが最後の一文字だけ変わってる。
「そうか」
そうかって、反応薄いね。
これは何か知ってるけど、言う気は無いやつだ。
まあ、その内分かるか。
それより、この後どうするかだよ。
滋賀の方はお肉目当てで時々来てたから良いとして、大阪和歌山の方から回るかどうか。
基本的に同じ長に治められている地域は似たような感じみたいなんだよね。
ただ、あの大阪だからなぁ。どこに行っても自分の文化を貫く人の多い文化圏。
ちょっと気になるよね。
「どうしょうかな?」
「ロードよ、吸血鬼の女王が九尾の所へ来てほしいそうだ」
「え、やだ」
おっと、思わず。
「どのスレッド?」
「我々だけの所だな」
ああ、あそこね。
京都と北陸を案内したいと。大阪は、怖いくらいに変わってない?
私からすればこんなタイミング良く連絡よこした上に思考を読んできてるウィンテさんの方が怖いけどね?
「……まあ、行こうか。断っても向こうから来る気がするし」
「であろうな」
進路を変えた夜墨の頭上で溜息を吐く。
彼女、どんどん私のプロファイリングの精度上がってるんだよねぇ。断ったら突撃してくるのも、断る理由が面倒ってだけなの分かってるから。
楽に話せるし、来られても別に不快じゃないのもバレてる。そうで無かったら来ないだろうね、あの子は。
行くと決めたら、なんだかんだで楽しみになるのだから不思議だ。五十年でずいぶん絆されたものだと思う。
眼下の景色はすぐに古の都に変わり、京都市街に入ったのが分かった。
京都住みの友人が多かった事もあり、ここらはよく来ていた地域の一つになる。地元の町並みにも何処となく似ているので、少しばかりの郷愁を感じていたのも覚えている。
京都タワーは五十年前の戦いで壊れてしまったらしいけど、こうして見るとちょっと寂しね。
令奈さんの家、つまり現土御門家の本邸は、二条城の辺りにあった。
来るのは初めてだけど、これだけ強い気配が二つもあれば目印には十分すぎる。
「へぇ、けっこう大きい日本邸宅だね」
だいたい三百坪くらい? 建坪は、百五十無いくらいか。
うちの母親の実家も敷地面積二百の建坪九十ちょっとはあったけど、田舎だからなぁ。
この辺でコレは流石というか何というか。
庭園も中々。今でもちゃんと管理してるんだね。
「あ、二人とも出てきた。ウィンテさん、めっちゃ跳ねてるし……」
元気だなぁ……。令奈さんが呆れてるよ。
「先に行くよ」
早く行かないとウィンテさんが飛んで来そうなので、さっさと飛び降りる。夜墨は夜墨で小型化しながら追ってきた。
ちなみに今日の格好は、細身のジーンズに白のブラウスだ。
黒いワンピースのウィンテさんとは対照的かな。
「ハ、ロ、さーん! お久しぶりです!」
「あー、はいはい。久しぶり。分かったから抱きつかない」
着地と同時に飛びついてきた威厳無き女王を押し除けて、家主に向かう。
今日は耳も尾も隠していない彼女は、家によく似合う和装で、白い着物に紫の袴を履いていた。
「あなたも久しぶりね、令奈さん」
「そうやな。直接会うたのは、何十年ぶりやろか」
もうそれくらいにはなるか。
種族柄、姿形の変わらない私たちだから、時の流れがイマイチ分からない。
「まあ、立ち話もなんや。上がっていき。昼もまだやろ?」
「そうです! まずはお昼です!」
そういえばそうだ。
「じゃあ、お言葉に甘えようかな」
積もる話やら何やらは、食べながらでも良いだろう。
ここでうっかり魔力に込める情報の話をするとウィンテさんのスイッチが入っちゃうからね。
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