第40話 お昼は迷宮果実で

 お昼ご飯は、さっき採った果実でいくつか作ってみる。

 歩いてただけだし、重くなくて丁度いいかな?


「とりあえず、一個は丸焼き?」


『焼きリンゴか。いいね』

『確実に美味いやつ』

『私もお昼ご飯作らないと』


 串、は用意しなくていいか。

 尻尾に刺して、魔法の火で焼こう。


『わいるど』

『尻尾にそんな使い方が……』

『べんりですね』


 なんか呆れられてる気がする。

 気のせいって事にしておこう。


 ん-、他は何がいいかな?

 ジュース?


 まあジュースで。


 空中に保持されるように上剥きに力を加えて、ひたすら細かく。

 水分はそれなりにあるから、果汁百パーでいいかな。


 で、交換したコップに入れてっと。


「よし、ジュース。お味は……、さっき齧った時と一緒だね。でも思ったよりはサラサラになったかな」


『まあそうだろうな』

『魔法の使い方が器用すぎて参考にならん。俺らはミキサー使おうな。。。』

『果実ジュース飲みたい』


 さて、他は何がいいかな?

 ん-。


 って果実を眺めながら悩んでたら、リスナーさん達が察してくれたみたい。


『ジャム』

『パイ』

『カレーの隠し味』

『天ぷら』

『凍らせてみよう』

『天ぷら?』


「ジャムかー。有りだね。パイは生地がなー。帰ったらで。カレーは昨日食べたから却下」


 で、天ぷら。

 天ぷらかー。


「フルーツの天ぷら、聞いたことはあるね。めちゃ甘くなるんだっけ」


『そうそう。意外とうまい』

『あるのか・・・』

『ほー。旧時代なら試してた』

『てかこの実の名前どうするよ』


 とりあえずジャムと天ぷらは作ろうかな。

 一個半をジャム、残りの半分を天ぷらにする。


 とりあえず水、薄力粉、卵を交換して、全部冷やしておく。

 で、果実二個をスライス。

 ジャムにする分はさらに細かくして、新しく交換した鍋へ。


 ふむ、名前ね。


「名前かー。案募集」


『りんごとみかんでリンミ』

『近江姫』

『迷宮りんご』


 鍋に果実と同じ量の砂糖をぶち込んで弱火にかけてっと。

 これは時々かき混ぜる程度で基本放置かな。


 あ、丸焼きはそろそろ良さそう。


「丸焼きが出来たね。じゃあ実食」


 ん、焼きリンゴだ。

 甘味が強い焼きリンゴ。


 美味しい。

 美味しいけど、感動は薄い。


『美味そう』

『こんがり。バターのせたい。あとシナモン』

『りんごとみかん? ミリンだろ』

『はちみつも』

『ミリンは別の調味料だな』

『ハロさんが見つけたし、ハロリン』


「あ、シナモンとバターはありだね。普通に焼きリンゴだったから。かなり甘いからはちみつはクドくなると思う」


 という訳で追加。

 からの再加熱。


「ん、合うね」


 人間だった頃の私だったらこれでお腹いっぱいだけど、今ならまだいける。


 名前の案は、大体出そろったかな?

 夜墨がリストにしてくれたのでそっちで確認。

 有能従者です。


「名前の案、けっこう出たねー。近江姫はどっちかというと品種? ミリン、は見なかったことにして」


『見なかったことにされた・・・』

『どんまい』

『ハロさん酷い!』

『しくしく』


 知らない知らない。

 私ワルクナイ。


 なんて言いながら空いた尻尾でジャムをかき混ぜつつ、天ぷらの用意。

 尻尾の力加減はもうばっちりだよ。


「リンミ、リミ、メイリン、迷子林檎……これ言った人タイムアウトかな?」


『なんで!?』

『草』

『自業自得かな』

『どんまい』

『ハロちゃんの鬼! 悪魔! ドラゴン!』


「冗談冗談。ドラゴンは違いない」


 ん-、どれがいいかな?

 ハロリンは、なんか恥ずかしいので無し。

 私の名前が絡んでるのは全部却下でいいや。


「じゃあ、リンミで。分かりやすいし」


『よし選ばれた!』

『ん、了解』

『次こそ!』


 ん、油の温度はそろそろいいかな。

 衣をつけたリンミのスライスを投入!


 じゅわわーって音が食欲をそそるね。


「天ぷらの方も結構甘い匂いだね」


『うわ、腹減ってきた』

『ASMRだ』

『いいなー、天ぷら』

『キス天と舞茸天くいてー。あとナス』

『いいな。誰か、日本酒! それかビール!』


 定期的に飯テロする迷宮攻略配信はこちらです、はい。


 なんて言ってる間にジャムがいい感じなので、一旦強火で沸騰させ、ビンに詰めていく。

 ミカンっぽくもあるのでレモン果汁は無し。

 煮沸消毒はしてないけど、交換したてなので大丈夫でしょ。


 これで天ぷらを食べてる間に粗熱もとれるはず?


 よし、天ぷらもいいね。

 余熱でけっこう火が通るから、ちょっと早めに上げるよ。


「はい、完成。……これ、何で食べたらいいんだろ?」


『天つゆ、じゃないな』

『お塩?』

『そのままでも!』

『リンゴっぽいならシナモンもありじゃね?』


 ふむ。

 天つゆじゃないのは分かるな。


「じゃあ、そのままと塩と、シナモンパウダーで」


 まずはそのままから、いただきまーす。


 ふむ、触感はサクっからのしっとり。

 衣と果肉だね。


「あま! 超甘い。あれ、砂糖なんか入れてないのにな?」


 思った倍は甘い。

 これ、ジャムの砂糖の量失敗したかな?


 まあ、食べてみれば分かるか。

 じゃあ次はお塩。


 ん、塩味がいい感じ。

 角のある味の塩にしたけど、正解だね。

 味のバランスが良くなった。


「そのままよりは塩だね。角のあるやつ」


 で、最後にシナモンパウダー。


「あー、ありだね。焼きリンゴのよりは少し粉っぽい。これはこれで美味しいかな。私としては塩の方が好き」


『ハロさん、日本酒好きそうだしなぁ』

『塩か』

『龍って日本酒とか好きなイメージ』

『酒のみ配信待ってる』


 おかしい。

 酒好きそうってコメントの方がリンミの味に関するやつより多い。


 いやまあ、好きだけど、日本酒。

 この体になってからは特に。


「酒のみ配信は、一応考えておくよ。それより今は検証」


『忘れてた』

『そうだった』

『忘れてたって、ちょっと言い出しっぺ』

『とか言いつつ私も忘れてた』

『だって美味そうなんだもん』


 リスナー諸君?

 

 だが許そう。

 美味しいは正義だから。


「今大体、三十分くらい経ったかな?」


 配信時間を見て確認。

 うん、それくらい。


「まだそのままだね。洞窟型の壁は一時間くらいで戻ったっけ」


『うん、それくらい』

『まだ戻らないか』

『切り倒した方もまだ変化なしだな。放置した壁の破片は三十分で消えたのに』


 そういえばそうだね。

 ふむふむ。

 これはこのまま残る可能性がある?


 だったら助かるんだけどなー。


「まあ、ジャムがある程度冷めるまで時間があるし、のんびり待ってみようか」


 粗熱が取れた段階で味見して、魔法での冷却に切り替えるつもりだけど、一時間以上はかかる見込み。

 その間に変化あるかな?


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