第23話 未来が楽しみだね
㉓
はてさてはて、思った以上に凄いけど、これ、どうしようか?
「吸血鬼ってみんなこんな感じなの?」
「いや、様々な要素が組み合わさった結果だろう」
ふむ。
今、配信画面の中では実験結果のまとめをウィンテさんがしてる。
それが中々にえげつない。
彼女自身、個としての力にかなりの可能性がある。
今は夜墨くらいだけど、力の使い方を覚えたらすぐに引き離してしまうだろう。
それに加えて、だよ。
群れとしても相当になるのが確実なんだ。
一番弱い階級でも、平均能力値C。
実験の中で生み出された最高階級、伯爵がベルゼアやオムカデアと同等の力を持っていた。
夜墨の話と合わせると、配下としての最高位、公爵はアラネアと同等の力になるんじゃないかな。
受け入れられる血の量は個人の資質とウィンテさんへの忠誠心に比例するみたいで、まだ伯爵までしか生まれなかったけど、それでも十分な戦力だよね。
更に各吸血鬼たちも同じように自分の階級未満の眷属を生み出せる。
つまりは鼠算方式に増えていくんだ。
これは、下手をするとどこかの時代で吸血鬼狩りが起きるんじゃない?
まあ、仮に吸血鬼狩りが起きたとしても別にいいんだけど。
私、龍だし。
ただ、もし私に吸血鬼たちが敵対したら面倒。
私と夜墨なら何とかなるとは思うよ。
夜墨でさえ伯爵の一つ上、侯爵以下はぶっちゃけ片手間で相手できるからね。
公爵級複数で来られると、夜墨は危ない。
つまり、ウィンテさんを含めた全戦力で来られたら、かなりの消耗を強いられることになる。
油断してると殺されちゃうかもね。
そんなわけで、暫くはほどほどの距離を保ちつつ仲良くします。
私が許容できるぎりぎりまでで。
呼び名が愛称になったのは、その関係。
こんな状況で彼女からお願いされたら、無下にしづらい。
許容できるだけで嫌なものは嫌なんだよ、こういう繋がり。
幸い、ウィンテさんはマッドなだけで良い子かつ頭も回るから、薄い繋がりなら苦にならない。可愛いし。
可愛いは正義だよ。
私の自由を害するなら、知らないけどね。
「まあ、もっと強くなれば問題ないよね」
「そうだな」
という訳で、私の生活はあまり変わりません!
テキトーに配信して悠々自適な生活を保ちつつ、良い感じに訓練して強くなる!
よしよし、問題解決って、うん?
「えっと、その、ごめんなさい。絶影さん。あまり暴言が多いのは困ります」
これ、私の最初の配信でブロックしたのじゃない?
絶♰影って明らかな厨二病。
言動も中学生か高校生くらいっぽい感じ。
要はお子様。
学ばないなぁ。
『うるさいザコブス!アニキのお陰かお前なんかより強くなれるだ!俺は偉いだろ!』
あらあらまあまあ、て感じだね。
日本語変だし。
ていうかこれ、配信からはブロック出来るけど他に行ったら見えるんだ。
面倒。
「ねえ夜墨、スレッドの方でこの人いたことある?」
「いや、無いな」
スレッドの方では排除出来るのかな。
ならまあ。
あ、コメント消えた。
ブロックされたか。
「お騒がせしました。気を取り直して、続けていきましょう!」
お、プライベートスレッドに連絡が。
えっと、ブロックした人を共有できそうならしてほしい、か。
出来るかな?
あ、出来る。
ほい、送信っと。
身から出た錆で自業自得だけどさ、今こういった配信やスレッドから締め出されるってしんどいよね。
強く生きて欲しい。
私に関わらない範囲で。
さてさて、明日は朝から迷宮攻略の続きかな。
ウィンテさんに伝えておいてっと。
「あ、今ハロさんから明日の朝配信するって連絡が来ました!」
今の流れで言うんだ。
話ぶった切っちゃってる。
「私の配信は日が落ちてからにします! 吸血鬼って夜型のイメージですし、丁度いい? じゃなくて、ごめんなさい、続けます!」
あ、協力者の人に肩叩かれた。
名前なんだっけ、ワトソン? ワンストーン?
そだ、ワンストーンだ。
アインシュタインの英語呼び。
この人も検証スレッドでそれなりに見かける。
自分から人柱になるだけあってマッドよりのサイエンティストだよ。
他の人は多かれ少なかれ下心が見えるけど、彼だけ完全純粋な探求心って感じなんだよね。
まあ、全員研究バカなのはそうなんだけど。
「吸血鬼は研究者の種族になりそうだね」
「不死性の高い不老種族だ。丁度良かろう」
もし各種族が始祖の影響を受けるとしたら、龍は自由気ままで傲慢な種族になるのかな。
「そういえば、人龍じゃない別の種類の龍になる人がいたら、その人も始祖になるのかな?」
「いや、龍の始祖はロードだけだ。竜種は別だろうがな」
竜種って言った時の夜墨にちょっと対抗意識が見えた。
食べ物にもちゃんと好みがありそうだし、意外と人格はっきりあるんだよね。
龍の姿のままで良かった。
これくらいなら兎も角、人の姿だと事と次第によっては人間ぽくて面倒ってなってたかもだから。
ヒンヤリした鱗の体を撫でながら思う。
反応は特にない。
気持ちいいし、私に対して悪感情を抱くことは無い存在だからもう少し続けよう。
あ、配信終わるんだ。
それじゃあ、暗くなるまで本を読んでようかな。
うっかり朝まで起きてるって事にはならないようにしないとね。
十一階層以降にも美味しい敵がいたらいいけど。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます