悠宮 澪の楽しい奴隷蒐集生活〜Slave collector
@Rena4771
第1話 奴隷蒐集家の独白〜Monologue of slave collectors
唐突だか教えて欲しい。
奴隷。
この言葉にどんな印象を受ける?
昔、突然人さらいによって奴隷となった男が恋人との再開を果たすために、奴隷という立場に悩み、苦しみながらも普通の人間としての資格を取りもどしていく、という内容の映画を見た。
その映画は一応恋人との再開までを描くラブストーリー、というテーマだったのだが人々の奴隷への扱いがとてもリアルに表現されており、賛否両論を巻き起こした。
当時10歳だったオレには些か刺激が強く、思わず泣き出してしまったのをよく覚えている。
何はともあれ、これがオレと奴隷という概念との初めての出会いだった。
古代ギリシアの哲学者、アリストテレスが「生命ある所有物」、また「鋼鉄の人」として知られる元ソビエト連邦の首相、ヨシフ・スターリンが奴隷を「家畜同様に売り、買い、殺すことが出来る」と定義したように、昔から奴隷とは権利のある者の玩具、または
歴史的には労働力としての側面はあるものの、
持ち主からの暴力、強制的な性行為、家畜同様の食事、etc...
奴隷に対して実際に行われた侮辱行為は無数に存在する。
辞書には、人間としての権利・自由を認められず、他人の支配の下にさまざまな労務に服し、かつ売買・譲渡の対象とされる人と説明されている。
だがこんな文面からでは奴隷に対して人間が行なっていたこと、或いは今も行っている事は何もわかりはしないだろう。
あるものに心を奪われ、それに縛られている人のことも奴隷と表現する。
このような言葉からもつまり奴隷に自由はなく、常に何かに縛られる存在であると言う事が伺える。
いずれにせよ、良いイメージは無い。
世間でも奴隷制は忌むべきものとして扱われることがほとんどだ。
例えば、永らくフランスで英雄と呼ばれて来たあの皇帝、ナポレオン・ボナパルト一世も、今では奴隷制度を復活させたとして痛烈に批判されている。
他にも今までに偉業を成し遂げ世界に大小様々な影響を与え、偉人と呼ばれてきた人達でも、現代のモラル重視の考え方により再評価されインモラリストという不名誉なレッテルを貼られる。
それほど現代では奴隷制を忌んでいると言うことだ。
:非人道的だ。
:奴隷にされている人が可哀想。
:なぜそんな酷いことができるのか。
オレ自身、本当にその通りだと思う。非人道的で酷い。確かにそうだ。
でも。
この奴隷という概念、立場、扱いを知った時、オレは...
興奮した。
かつて無いほどに。
誰かを自分の思い通りに動かし、使役することができる。
自分自身のどんな欲望をぶつけても怒られない存在。
最高じゃないか。
いつでも自分を肯定し、絶対的な信頼をおける仲間が欲しい。
自分に反抗しているものを奴隷に堕とし、モノとして使いたい。
世の中にそうそうに見切りをつけ、日々をダラダラと無気力に過ごしていたオレにとってその奴隷という概念は新たな希望となった。
そして何より日々平等と叫ばれている偽りの現状をぶち壊し、対等な立場であったはずの存在を辱め、モノとして扱いたい。
きっとオレの考え方はとても反社会的で気味の悪く、歪んでいる、抱いてはいけない
こんな醜くも魅力的、そして身勝手な欲望。
或いは誰もが持っているのかもしれない欲望。
最低だ
頭がおかしい
狂ってる
そんな風に蔑まれても仕方のない欲望。
それはまるで麻薬のようにその妄想は心地よく、かつ依存性の高いものだった。
興奮しないわけがない。
その支配者として奴隷を使役する甘美で蠱惑的な快楽、愉悦を夢見てしまったのだから。
考えれば考えるほどにあれもしたい、これもしたい、という欲望にまみれた妄想が広がる。
心にオレという鎖をつけ、縛り付ける。
今までの奴隷制がそうであったように。
オレは止まらない、止まれない。
止まるつもりも無いし、誰にも止めさせない。
障害はすべて破壊して、この子供のような夢を叶えてみせる。
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