おぢさん、クソイケメン男子高校生になりました!

観葉植物

第1話 事故死したらイケメン時代に戻った

 毎日、薄暗い部屋でゲームをして、夜中になったらバイトに行く。

 昔は実家でのんびりやっていたのだが、両親は我慢の限界だったのか俺を家から追い出し、そのまま縁を切った。


「ふぁぁぁぁ⋯⋯。」


 ゴミが散らばっている布団の上で今日も絶賛ゲーム中。

 俺は、48歳独身で人生負け組の男だ。


「もう行かないと。」


 夜中にシフトを入れた理由は、俺が気持ち悪いらしく、バイト仲間の子達から嫌われているからだ。それに気づいた時はなかなかのショックだった。

 靴を履いてバイトに向かった。夜中は車や人が少ないので、本当にたまに信号を無視して渡ってしまう。

 

「信号赤だけど⋯⋯渡っちゃお。」


――バンッ!!!


 大きな音が耳に響いた。視界がぼやけてよく見えなかったが、多分轢かれたのだろう。

 こうして、俺の人生は終了した。


          *


「⋯⋯うーん。」


 死んだ。俺は死んだんだな、呆気な。いや、待て⋯⋯そしたらこの感覚はなんだ?

 まるで、ベッドの上にいるような感覚だった。


「――ぶき、伊吹!」


「⋯⋯え?」


 聞き覚えのある声がした。それは数年前に縁を切った母の声だった。


「……なんで、母さんが?」


「どうされました、瀬戸さん。」


 まさかの医者登場、どうやらここは病院のようだ。


「⋯⋯息子が、伊吹が起きました。」


 その後はよく覚えてないが、何故かこの光景に見覚えがあった。

 俺は中学最後の年に事故にあって、母が同じ台詞を言っていた。

 

          *


 数週間後、無事退院した。母が車で俺を実家まで運ぶために、松葉杖を持ったまま車に乗った。

 そこまではいいんだ、だが明らかに俺の声はいつもより高いし、腕も細いし、何より体が軽い。

 

「怖くて鏡見れてないんだよな。」


「どうしたの伊吹?」


「ううん、なんでもないよ、母さん。」


 車の窓に頭をぶつけた。

 車に乗ったの、いつぶりだっけ……。

 目を瞑ろうとしたその時、反射で自分自身の顔を見た。


「……!?」


 ――やっぱりな。一番現実にありえない事が起こっていたのか……まあ、大体は予想してたけど。

 そして、俺は現実だと思いたくないけど、恐る恐る母に尋ねた。


「――ねえ、母さん。」


 鏡越しに母は俺を見た。


「なあに?」


「今日、何年で何月何日?」

 

「……え?今日は1990年の4月27日でしょ。どうしたの急に。」


「いや、なんでも。」


 最悪だ。

 俺は33年前に戻っていた。


 

 

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