社畜おじさんはダンジョンとおともだち
虎と狸の蚊は参謀
エピローグ 社畜、仕事に溺れる
第1話 社畜は仕事に溺れている
土曜日の午後、節電の為に照明が落とされた事務所の片隅で僕は作業をしています。ウチの会社では各部署で僕同様にやっている人間は最低でも一人か二人はいる筈ですね。大抵は同じ人間ですけどね。
受付の彼女にしたって毎週出てくるのはあの娘だけだし、人事の課長は離婚して家にいても居場所が無いからとか言っていつもいるし・・・仲間と言うか同胞と言うかいつものメンツには並々ならないシンパシーを感じる今日この頃ですよ。
どういう訳だかウチの会社は、日曜以外は天皇が死のうが元号が替わろうが地震が起きようが停電してようが休みません。当然社員も出ています。
土曜やら祭日やらに堂々と休めるのは、お偉いさんだったりコネ社員だったり接待ゴルフだと称して遊び歩く無責任野郎だったり・・・つまりはウチの部署で例えるなら僕以外の社員って事です。
その休みの筈の日曜だって上司の雑用やら急な仕事の応援やらで
一応名乗らせて貰えば、僕の名は
身長は中学生で急停止して160にも届かないまま、髪の毛と言えば命令も聞かずに勝手に戦略的撤退を繰り返し既に後頭部まで広がるサバンナ地帯が広がる惨状、体重は・・・下限を下回って献血すら出来ない程。部長曰く、陰干しに出して仕舞い忘れた即身仏だとか・・・くだらない大喜利する暇があるならちゃんと仕事をして欲しいものですよ、ええ。
トドメで言うなら、世間では30まで童貞だったら魔法使いらしいですけど
もう賢者って名乗っていいかな?
ちなみに今、僕が抱えている仕事というと、パソコンどころかワープロ(今時普通は見掛けませんけど我が社にはまだあります)でもパニくるアナログな部長(僕よりかなり年下)の代わりに週明けの会議用の資料造りと仕事も
なぜか本業の自分の分の事務仕事は残業するまでもなく終わっているのが何とも言えず哀愁を誘うと言うか・・・
ハッキリ言って僕以外の課員は普段から仕事をしていません。そのしわ寄せが今の状況という訳です。僕が何も言い返さない50男だからと全て押し付けておいて、もしも不都合が生じたなら誰のせいであろうと僕を全力でみんなで袋叩きにするんです。
そんな連中に囲まれて僕は生きています。
それにしてもどうにか仕事にケリを付けて、今日こそは久しぶりにダンジョンにでも行きましょう。こう見えて、周りの奴らはきっと思ってもいないでしょうけど僕はダンジョンがこの世に現れた時以来の探索者なんですよ?そう、あれは中学の頃だったから40年前の事でしたね。
あれは夏の暑い昼下がりの事、本を返しに行こうと夏休みの図書館へと踏み込んだ時、そこは異世界になっていたです。ダンジョンなんてそれまでゲームか絵物語の中にしか存在していなかったのに、その日図書館の中はダンジョンに変わってました。
いつもだったら明るくて落ち着いた雰囲気で微かにクラシックが流されていた室内は暗くじめじめとした湿地帯に変わり人気は無く異臭が漂っていました。
いつも中にいた筈の人たちの姿はどこにもいません。
そして踏み込んだその場所に偶然いたスライムって今は呼ぶ怪物を
でもそれなのになぜダンジョンに行きたいのか・・・実を言うと最近ダンジョンが夢に出てきて僕を呼ぶんですよ。
言葉じゃなくてイメージを飛ばしてくるって言うか、姿はハッキリしないのにダンジョンの擬人化したような姿だとなぜか解るモノが視界の片隅で恨めしそうに僕を見つめ続けるんですよ。眼だけがじっとりと僕の方に向いてるんですよ。
そのプレッシャーたるやその後また寝るのが怖くなって、思わず夜の住宅街を徘徊して職務質問を3回受けてしまったほどでしたから。
それにはもう耐えられなくなってきましたから、一念発起してダンジョンに潜ってみようなんて思ってしまった次第で・・・本当は嫌でたまらないんですけどね・・・
ただそれだけだったんですけどね・・・
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