勇者を嫌う者(仮)

綿菓子

第1話 プロローグ⑴

とある村に、勇者が誕生した。

というのも、村にいた名前をイディオットという10歳の男児が岩に刺さった剣を抜いたという。

初めはかっこいいし凄いからと喜んでいたイディオットだが、強くなるための修行と勉強、家族や友達とは全然会えず遊べないと文句を言っていた。

それを聞いた11歳の幼馴染、ルヴァンシュは、こっそり自習や休憩の時間にイディオットを遊びに誘い、イディオットが辛くないように努めた。

そのうち、皆が厳しいなか自分に優しくしてくれるルヴァンシュに淡い恋心を抱くのは、幼いゆえに当たり前だった。

一方、ルヴァンシュの方も自分を慕ってくれるイディオットに対し、嬉しく思っていた。

そもそも一目惚れだったのがどんどん好意が大きくなっていって今に至る。

そんななか、12歳になったイディオットに、王国へ来るよう知らせがあった。

もうルヴァンシュや家族に会えなくなると感じたイディオットは、ルヴァンシュに自分の気持ちを伝えることを決めた。

「急に呼び出してどうしたの?イディオット」

「...実は、王国からあっちに行くように知らせが来たんだ...多分もう、会えない」

「え!?そんな...」

「だから!もしまた会うことが出来たらその時は、俺と結婚してくれないか!」

「へ?」

「きっと、君を守れるぐらい強くなるから、だから!」

「は、はい!お願いします!」

イディオットは了承して貰えて、ルヴァンシュは好きな人から求婚して貰えて、どちらも幸せな状況でイディオットは王国に向かった。



「王様、なんでしょうか」

「君がイディオットじゃな?面を上げなさい」

「はい」

「実は、7年前にこの大陸の東端にある国に、魔王が生まれたんじゃ」

「魔王が生まれてすぐその国に世界中の魔物モンスターが集まり、そこからこの国にまで弱くはあるが魔物モンスターが現れるようになった」

「そんな...!」

「そこでじゃ!勇者である君に魔王を討伐して欲しい!」

「僕が、魔王を?」

「あぁ、とはいえ勇者といっても1人は大変じゃろうと思ったからのぉ。お主の仲間になる者も来てもらっとるぞ?入れ」

「はい」

「この方が?」

「あぁ、この者は、この国で1番強いといわれている魔導師じゃ」

「マギアと申します」

「女だからと侮るな?普通に強いからのぉ」

「そうなんですか」

「とりあえず、この者と一緒に旅をしてくれ。魔王を倒してくれるなら、仲間を増やすもよしじゃから自由にしてくれ」

「わかりました」

「マギアもいいな?」

「はい」

「では、頼んだぞ!」


「改めて、僕はイディオットだ。よろしく、マギアさん」

「改めまして、わたくしはマギアといいます。勇者様の方が位が高いのでマギアで結構ですよ」

「分かった、マギア」

「ではまず、勇者様のお力がどれほどか見せてもらいます」

「え?あぁ」

「召喚!小鬼ゴブリン!」

グギャギャー!

小鬼ゴブリンか...!それ!」

ザシュッ

グギャッ...

「ふむ、無駄な力が入りすぎですね」

「そ、そうか...」

「ですがお力は確かです。魔王のいる国に行く道中、様々な魔物モンスターに出会うかと思われます」

魔物モンスター...」

「そこで鍛えましょう。実戦を積めばさらに強くなるかと」

「わかった!はやく魔王を倒すんだ!」

かくして、旅は始まった。しかし、勇者の心には迷いがあった。

強くなろうという思いもあったが、それと同時に魔王を本当に倒せるのか、死んでしまってルヴァンシュに会えなくなったらどうしよう。

そんな迷いが、イディオットにはあったのだった。

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