第7話 脈打つ檻
次に気がついた頃には、カリムの視界は真っ暗になっていた。
眠っているのか起きているのかも
「……!!」
だがどこか遠くの方から
何か言い返そうと深く息を吸い込んだとき、その声もまたカリムの耳から脳内へと突き抜けるように飛び込んできた。
「カリム!! …おいカリム!! 返事をしろ!!」
怒鳴り声は
逆光も相まってその顔立ちは判然としなかったが、カリムの口元からは言葉にならない溜息が漏れ、結局
「…ドランジア…隊長……?」
「やっと起きたか…おい、一度しか言わないからよく聞くんだ。」
ルーシー・ドランジアはカリムの安否を確認すると、そのまま
「ラ・クリマスの悪魔による厄災が発生した。青白い
「だがそこに厄災を引き起こしている宿主がいることは
早口に簡潔な説明が推し進められると、ルーシーは終わり
その先端がカリムの右腕に——右腕に巻き付いていた分厚い
だがカリムがもう一度頭上を向く頃には、
そこは
その中でカリムは下半身まで
そして目の前ではリオの身体が同じく
地肌は両腕と両脚に絡む
一連の様子からはルーシーが言及していた「厄災を引き起こしている宿主」がリオである事実をまざまざと見せつけられていたが、事実と現実を同等に捉えることをカリムの本能が拒絶していた。
だが
「リオ…? ……リオ!!」
カリムは精一杯の声量を振り
昨日まで何度もリオの容態を案じる夜を過ごしたが、そのいずれもこの
——どうして…どうしてこんなことになってんだよ!? …俺のせいなのか? 俺がリオにあの果実をあげたせいでこうなってるのかよ!?
自分の心臓が早鐘を打つ音が一層高鳴り、カリムは夢中で身を乗り出してルーシーが落とした道具を
それは槍と呼ぶには先端が丸く、黒い鉱石の付いた杖のようなものであった。だがその鉱石が衝突することで、右腕に巻き付いていた
理屈は
下半身を掘り返すには到底間に合わないことは、気が動転していた
——ここから抜け出すのは無理だ…どうすればいい? あの隊長の言う通り、この杖をリオに差し向ければ解決するのか…?
杖を上下反転させて持ち替え、腕を伸ばせば確かにリオに届くような気がした。
だが
——外で何が起こってるのかは
——でもリオはどうなるんだ? こんな状態になってて助かるのか? 宿主ってどういうことなんだよ? もしリオが助からないんだとしたら……そんなこと、考えたくない……!
「…お姉…ちゃん…。」
そのとき、
そして血走った
「リオ!! 大丈夫なのか!!?」
「…ごめんなさい…お姉ちゃん……私…ずるいこと……しちゃった……。」
「
「…お姉ちゃんに…心配…させたくなくて……強い…身体に…なりたくて……
だがリオは依然として苦しそうな
一方のカリムはその理由も言葉の意味も聞こえているのに理解が
「…命がね……
「何を言ってんだよ、さっきから…この植物のせいなのか…!?」
カリムはリオを捕らえる
だがリオが苦しむ原因がそれだと見定めても、どの
「…駄目だよね……自分が生きるために……
そしてリオはゆっくりと頭を起こしながら、もう一言を付け足した。
「…神様に怒られて……当たり前だよね……。」
その顔は、まるで幼稚な
その気恥ずかしいような一言はカリムの心の
浸かっていた
——なんでリオが、そんなことを言うんだよ。おまえは何も悪くない、全部俺が悪いんだ。神様に怒られるべきなのは俺の方なんだ。なのにどうしてリオが、そんな目に
カリムが杖を固く握る両手にはじんわりと汗が
力無い微笑を浮かべるリオを前にこれ以上何を呼びかけるべきかも
だがそうしているうちにリオは
「…ごめん…お姉ちゃん……もう……耐えられない…かも……。」
その
「リオ…!?」
「…今までありがとう…お姉ちゃん。」
もう一度リオが頭を上げながらカリムに話し掛けようとしたが、視線が合う前に
脈打つ
カリムは静かな異変の中で自分の不規則な呼吸と
「…そんな……リオ……?」
次の瞬間には下から地面が割れるようなけたたましい音が響き、足先から
だがリオだけはその場に浮かぶように
それがカリムの見たリオの
——どうしてリオは死ななければならなかったんだ? 罪を重ねてきたのは俺の方だ。
——この
——こんなの
——
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