第七話 (3)

 おじいさんが木を伐採したところに木を植えたけど、魔物が出るって言っていた。おじいさん、いい人みたいだったから見に行こう。あたしは悲しい思い出の森に向かった。


 途中小さなあたしの社がある村を通った。あたしの社は手入れがしてあった。嬉しい。あたしと遊んだ子はもう亡くなっていた。村の周りをみんな幸せになあれと一回りした。


 森は伐採したところに木が植えられていた。森の浅いところは手入れがしてあった。森の奥に魔物がいる。あたしが近づくと逃げて行く。あたしは森を回って、それから山へ行って歩き回ってから山づたいにもどって山を降りた。


 小さな森をたどりながらあたしが暮らせて子供と遊べる森を探す。

 でもあまり遠くにはいけない。あたしはちっちゃい女の子と約束した。また来てね。約束だよといわれてうんと返事した。だから遠くには行けない。


 今まで山沿いの森だったけど、今度は少し山から離れた。でも魔物は山から来る。本当は山の近くがいい。ちっちゃい女の子との約束を破るわけにはいかない。ちっちゃい女の子はあたしの友達の女の子の子供だから。そして友達だから。


 あたしは山からもちっちゃい女の子の家からもそんなに離れていない森を見つけた。伐採したあと植林された森だ。元々生えていた種類の木を植えたみたい。程よい森になっていた。あたしは忙しい。山に通って歩かなくては魔物が来てしまう。子供が安心して遊べるように魔物が来ないように山を歩いて森に帰って来て、森に遊びに来た子と遊んで、時々ちっちゃい女の子に会いにいく。でもあたしは疲れない。毎日が楽しい。


 そうやって何年も過ぎた。ちっちゃい女の子の子供は、女の子はお嫁さんに行った。男の子はお嫁さんをもらって、子供が二人できた。


 ちっちゃい女の子が疲れて来たのがわかる。あたしは、トウケイの森に泊まることが多くなった。そして女の子と同じようにちっちゃい女の子を見送った。あたしは寂しいよう。みんな亡くなってしまう。寂しいよう。心の中の宝箱の中身が増えれば増えるだけ寂しいよう。アウ、アウ、アウ、アウ。


 あたしは山に近い森に走っていき、一晩中泣いた。もうやだよう。寂しいよう。

 アオーン、アオーン、アオーン、アオーン。

 昼間も泣いた。アウ、アウ、アウ、アウ。


 夜、女の子がちっちゃい女の子を連れて見せに来てくれた森に咲いている花を摘んでくわえて女の子の墓と、その隣のちっちゃい女の子の墓に供えた。

 寂しいよう。アウ、アウ、アウ、アウ。返事してくれないよう。アウ、アウ、アウ、アウ。

 あたしは明け方まで泣いていた。

 それからみんなにお別れを行って、また歩き出した。


 「お狐さん、乗っていくかい」

 あれ、聞いた声だ。行商人さんだ。

 うん。


 「ひい爺さんがなあ、後悔していた。お狐さんをとんでもない森に案内してしまったって。ごめんよ」

 いいよ。行商人さんのせいじゃないよ。


 「どうだい。しばらく一緒に回らないか。おれも話し相手がいないしな。お狐さんとは俺は初めてだけど、先祖からお狐さんとは長い付き合いだ」


 ああ、そうかあ。そういう考えもあるのか。あたしの友達の末と友達になれば長い付き合いになるのか。あたしは難しいことはわからないけど、少し気持ちが軽くなった。いっぱい新しい友達を作っておこう。


 行商人さんとしばらく一緒に回ろう。

 アオン


 そうかい、それじゃいっしょにまわろう。毎日木の実がありそうな森に泊まるからね。


 あたしは行商人さんが商売をしている間は森に行ったり、山里で商売している間は山を歩き回ったりした。ときどき行商人さんはあたしを森に置いて街に品物を仕入れに行った。そういう時は、あたしは森に来る子と遊んだ。何日でもないけど、行商人さんが戻ってくるまでには仲良くなっていて、いつも別れに泣かれた。あたしも泣いた。また来るからね。アウ、アウ、アウ、アウ。


 それから行商人さんと長い間一緒に回った。山里の村が多かった。暑くなって、森が色づいて、寒くなる頃だった。

 あれ。あたしが最初にこの国に来たところだ。


 行商人さん。ありがとう。あたしはもう大丈夫。

 「そうかい。それは良かった。心配してたんだ。楽しかったよ。それじゃまた。今度会うのは俺の子か、孫かな。アハハ」

 行商人さんはいつもの笑い声で去って行った。心配してくれていたんだ。ありがとう。

 アオン

 返事をした。

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