第3話

 加護を選び終えて次に進んで貰う。名前、容姿、加護と続いて、次は何だろうか。


 「次に選んだ貰うのはアイテムだよ!」


 「アイテム?」


 「そうだよ。どんな風にアナザーワールドオンラインで何をするかを決めるのに重要な選択なんだ。渡すアイテムは初心者用なんだけどね!」


 僕の前にいつの間にか現れたテーブルの上に複数のまとまったアイテムが現れた。それを見れば、このアイテム選びが重要なんだと分かった気がする。


 何ヶ所かに分かれて置かれているアイテムの固まりは、武器が置かれていたり、防具が置かれていたり、アクセサリーが置かれていたり、本が置かれていたり、最後の一つは袋が一つだけ置かれていた。


 「まずは武器から一つだけ選んでね!」


 様々な武器が置かれている上に下向きの矢印が現れる。ここから武器を選べと言う事なのだろう。頼りたくは無いけど早く遊びたいから頼る事にするしかないかな。


 「あのさ、この中から魔法を使うのに役に立つ武器はどれかな?オススメの物を教えて欲しいんだけど。」


 「私を頼ってくれるんだね!良いよ、教えてあげるね!!……可愛い小さな子が頼ってくれる。うへへへ。」


 最初の頃の威厳のある声はもう見る影もない有り様だな。て言うか、小声でボソボソ今まで言ってたのってあんな感じだったのか?


 この声の持ち主は残念で気持ちの悪い奴なんだと言う事は分かった。そんな奴のオススメする武器がどんな物なのかを時間も無いので確かめる。


 「この杖がオススメなのか?」


 「はい!そうですよ!初心者用の物ですけど、魔法媒体としてもなかなかですし、耐久力もあるので、魔物に接近されても振り回して攻撃も出来ますからね!」


 何の変哲もない杖だが、オススメされたこれを選ぶ事にした。次に選ぶの防具だ。これも数が多くどれを選べば良いのか迷ってしまうほどある。


 「防具もオススメするかな?」


 「うん、そうしてくれる?」


 「むふふ、分かったよ!!」


 数多く置かれている防具の中から分かりやすい様に矢印が現れる。その矢印を目標にして防具を漁って探していく。


 「このローブがオススメの物?」


 「そうだよ!これも初心者用なんだけどね!ほんのちょっとだけだけど、魔法の発動の補助をしてくれる刺繍がされているんだ!」


 そう言われてローブを良く見てみると、ローブの内側に刺繍が施されているのが確認できる。これが魔法発動の補助をしてくれるのだろう。


 「あとはその中から足に合う靴を選んでね!アオイちゃんの足のサイズの靴はこれだよ!!」


 革製の靴が置かれている場所の一つの靴を矢印が指していた。


 それにしても僕の足のサイズをどこで知ったのか、僕のチュートリアル中に見ただけで測ったのか?気持ち悪いな、本当に。


 嫌悪してしまうが、この矢印が指す革靴を履いてみると、本当にピッタリのサイズだった。


 「……気持ち悪いな。」


 「えっ!何が!?わ、私……気持ち悪かった、かな?」


 「お前、一体どうやって僕の足のサイズを知ったんだよ。」


 気持ち悪さを隠さずに謎の女性の声に向かって言う。


 「あっ!それはね、コクーンに入った時に身長や体重を測ったでしょ。その時に足のサイズも測っていたんだ。だから、その時の情報で知ってたんだよ!!本当だよ!べ、別にアオイちゃんの足をじっくり観察してた訳じゃないんだからね!!」


 言い訳なのか、本当の事を言っているのかは分からないけど、コイツが僕の生足をじっくり見ていた事は本当だと思う。


 「本当は見てたんだよね。僕の足をさ。」


 「ほ、本当に見てなんかないよ!!」


 「見られるのは気持ち悪いけど、それより聞きたい事があるんだよね。何でさ、防具に女物の服が置いてあるの?僕は男なのにさ。」


 「えっ、アオイちゃん……女の子じゃ、ないの?」


 この声、やっぱり僕の性別を勘違いしていたな。ていうか、コクーンで性別を入力したと思ったんだけど?


 「で、何でなんだ?それと、この今着ているワンピースも、もしかして女だと思ってるから、これになったの?」


 「う、うん。そ、そうだよ。間違えてごめんね…………男の娘、かあ……これはこれでありだね!」


 この謎の声は誤っているけど、僕の身体をジロジロといやらしい目で観察されている気がする。


 「私からお詫びのアイテムを上げるね!」


 謎の女性の声がそう言うと、僕の目の前に置かれたテーブルの上に半袖半ズボンの衣服が置かれていた。


 「これがお詫びのアイテムだよ!私特製のアイテムだから大事にしてね!効果も教えてあげるね!」


 そうして目の前に置かれた衣服の名前と効果を教えてくれた。この衣服は汚れや臭いが付く事がなく、着ていると幸運に恵まれるそうだ。


 「サービスが良いけど、これに何かあるの?」


 「ううん、何もないよ!善意だよ、善意!それで着替えないのかな?そのワンピースは私が預かって上げるからさ……はぁはぁ、男の娘なんてレアだよね!本当に私は運が良い!」


 コイツ、僕の着替えシーンや脱いだワンピース狙いか!!どれだけ気持ち悪い変態なんだ!!


 「これは後で着るよ。今は着ない!!」


 「えっ!な、何で!!」


 「逆に何でお前みたいな気持ちの悪い奴の前で着替えると思うんだよ!!」


 レアアイテムをくれたりするけど、下心が見え見え過ぎるんだよな。


 「で、今それを着なかったら没収する訳?お詫びなのに?」


 「うっ、し、しないよ。それは、もうアオイくんの物だしね!……ここで没収なんてしたら嫌われちゃうもんね。」


 コイツ、まだ僕に嫌われていないと思ってるのかよ。それに小声で言ってるつもりみたいだけど聞こえるし。もしかして、わざと聞かせてるのか?


 新たに謎の女性の声に対する疑問が湧いて来るが、もう良い加減アクセサリー選びに移ろうと思う。


 「これにもオススメはあるの?」


 大量のアクセサリーが置かれている場所に移動すると、時間を話していて経ってしまった為、早く進めたいからオススメを聞く。


 「は、はい!オススメだよね!それなら、これだよ!!」


 矢印が現れた場所にあるアクセサリーを見ると、そこには星の形をした宝石の様な物が付いたヘアピンだった。


 「これ?なんか、初心者用のアイテムには見えないんだけど?」


 「おっ!気付いたんだね!アクセサリーの中には初心者用のアイテムじゃない物が隠されてるんだ!オススメしたのがそれだよ!」


 「良いの?そう言う贔屓しちゃって。」


 「構わないよ!私以外にも気に入った子にはこう言う事しているの、多いしね!」


 

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