第2話
「ようこそアナザーワールドオンラインに……私は名前は言えませんが、あなたのチュートリアルの案内人です。」
「ど、何処から!?」
キョロキョロと辺りを見回しても、この何もない場所には僕一人しか居ない。
一体この謎の声が何処から聞こえるのか、それに何で名前を教えてくれないのか、分からない事だらけだが、チュートリアルの案内人と言う謎の声の話を聞く事にする。
「落ち着いた様ですね。まずは名前から教えてください。」
謎の声がそう言うと、目の前にウインドウが表示された。
これを操作して名前を決めるのか。名前は僕の名前のカタカナ文字の入力すれば良いかな。
ポチポチとウインドウを操作して、僕の名前であるアオイと入力を終えて決定ボタンを押した。
「あなたの名前はアオイで合っていますか?」
「はい、そうです。」
「はぁはぁ、ならこれからはアオイちゃんと呼びますね!……それにしても私は当たりです。」
いきなりテンションが上がって、更にちゃん付けされちゃったよ。それに最後の方は何を言っているのか聞こえなかったし、何だかこの人?僕に性的興奮をしていた気持ち悪いロリコンやショタコンの変態たちを思い出す。
ゾワッと背筋が震えてしまう中、可笑しな人がチュートリアルの案内人になってしまったと思ってしまった。
「は、早く次の案内をしてくれないかな。」
「はぁはぁ、分かりました。次は容姿ですよ!変えられるのは目、肌、髪の三種類です。可愛いアオイちゃんになってくださいね!」
顔に出さない様にしているが、頬が引き攣る様な感覚がする。それでも目の前に表示されたウインドウの操作を行なっていく。
目も肌も髪もほんの少しだけ色が違うとかでかなりの数があり、髪は長さも変えられる為、どれを選ぶのか凄く大変だ。
それで決めるのに時間が掛かりそうだと思い、このロリコンかショタコンの女性の声に、何か簡単に決められる方法は無いのかを聞いてみた。
「それならありますよ!縦にスライドして見てください!一番下にランダムってあるはずです!」
言われた通りにスライドすると、一番下に隠されていたかのようにランダムの文字が現れる。
「あった!」
「ランダムを押せば自動で容姿の設定を行なってくれます!何度か繰り返す事も出来るんですよ。やって見てください!……ぐふふ、干渉して私好みの容姿にしてしまいましょう。」
やはり、この女性の声の最後の方が何かを言っていたようだが聞けなかった為、勘違いかと思い、僕はランダムを押した。
すると、ウインドウの画面に映し出された現実の僕の容姿から別の容姿へと変わった。
「金の髪に青い目だね。肌の色は色素が薄くなって白くなったのかな。」
「アオイちゃんの今の容姿は金髪碧眼ですよ!可愛いですよ!アオイちゃん!……良いですねぇ、干渉した甲斐がありました、はぁはぁ。」
この謎の女性の声が誉めてくれているが、それよりも自身の容姿の確認に忙しくて、この気持ちの悪い女性の話は聞き捨てていく事にした。
「ちょっと髪の毛が長い気がするけど、短くしようかな?」
「えっ!?そのままの方が可愛くて似合いますよ!!そのままにしましょうよ!!」
「何で口出しするんだよ。僕の好きにしても構わないだろ?」
「そ、それは、そうなんですけど……。」
何か怪しいな。何を企んでいるんだ?この声は……。そうして怪しみ訝しんでいると、どれだけ今の容姿が良いのかを、この謎の女性の声は雄弁に語る。
それがあまりにも長く気持ち悪い事まで言う為、容姿はこのまま変えない事にした。
「絶対!絶対に!!変えないでくださいね!!!」
「しつこいよ。気持ち悪い!」
つい、正直な気持ちを言ってしまう。
「き、気持ち悪い!?……はぁはぁ、罵られてしまいました。何でしょう、この感覚は……癖になってしまいます。」
そうすると、この謎の女性の声はショックを受けた声が聞こえた後に、また何かボソボソと聞こえない声で何かを言っている。
「はぁ、早く次に行ってくれないかな。」
「は、はい!次ですね!」
僕が呆れながら言うと、チュートリアルは進んで行く。
「次は加護です!!」
「加護?」
「加護とはレベルアップ毎に入手する事が出来る力ですね!では、これから加護の説明をしますね!」
重要そうな話が聞けるのかと、大人しく話を聞いていく。
加護とは上位存在が下位の存在を祝福した際に与えられる力の事なのだと言う。この上位存在は神やそれに近い存在の事を言い、レベルアップをするには、この上位存在へと祈りを捧げないと行なえないそうだ。
そして加護には様々な種類があり、発動型の加護と常時発動型の加護の二種類が主だそうだ。
稀に発動型と常時発動型の両方の性質を持つ加護もあると、この謎の女性の声は教えてくれる。
「最初に渡される加護はランダムなので選べません!ですから、ウインドウに表示されたランダムの文字をポチッと押してください!」
「選べないんだ。それは残念だな。」
「三回までならやり直せますからね!」
それは良い事を聞いた。一回だけだった時に欲しくない加護を渡される心配をしなくて良くなった。
アナザーワールドオンラインをプレイするに当たって、僕は魔法を使いたいからね。これで剣が得意になる加護を渡されても困ったよ。三回もやり直せるなら、魔法に関係する加護も手に入るだろ。
そして目の前のウインドウに表示されているランダムの文字を押した。すると、様々な加護の名前が表示されて行き、最後に幸運の文字で止まった。
「幸運の加護か……。」
出来れば魔法系の加護が良かったけど、幸運も運が良くなると思えば良い加護だろう。その為、ランダムをもう一度やるかを悩んでいると、謎の女性の声が焦った様に話しかけてきた。
「私は幸運の加護って良いと思うな!良い事が起こり易くなるんだよ!これが良いって!これにしなよ!!」
「でも、僕は魔法を使いたいから、それなら魔法に関係する加護が良いと思うんだけど?」
「幸運を選んでくれたら、魔法を使うのに必要なアイテムを上げちゃうよ!だから幸運の加護にして!お願いだよ!!」
「はぁ、わかったよ。」
「やったー!!」
あまりの必死さに僕は押しに弱いなと思いながら、ウインドウに表示されている【はい】の文字を押して加護を幸運の加護に決めた。
まあ、それでもこの謎の女性の声の言う通り、幸運の加護でも運が上がって良い事があるなら良い加護だろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます