miSaki
@nezumi-73
第1話
商人達が踏み固めた街道をぶらぶらと進む。
前の町で熊みたいな女に絡まれた挙句、女に手を出した落とし前とかで鉱山に売られそうになって逃げだしてから何日経ったか・・・。
路銀なら普通にある。
ただ、ド田舎のせいで店が無い。
全く無い訳じゃないが数が少ない。
誰でも入れる様な店には奴らの目が光っている。
おかげさまで兎でも出てきたら、手持ちの金貨をぶつけて仕留めても良いと思えるほどの腹具合、とだけ言っておく。
商人達が踏み固めた街道なら行商の馬車に出会うかと期待したが、出会ったのは肥料を運ぶ馬車と、塩を担いだどこかの丁稚だけだった。
ちなみに塩は手に入ったので、あとは兎が出てきてくれれば腹具合は解決である。
武器は無い。
町を出るのにハンターでもない俺が武装なんかしていたら、門の所で止められて奴らに引き渡されてしまう。
衛兵だって人間である。
おいしい話は無視出来ない。
そして、不良衛兵が美味しく頂いた分の数倍を俺からむしり取る仕組みである。
・・・。
恨み節で空腹を胡麻化すのも限界と思い始めたころ、街道の横に横倒しになった馬車が見えた。
襲われてから時間が経っている様で、壊れた馬車の他には何もない。
野盗に襲われたのなら、馬車の中身も無いだろう。
獣に襲われたのなら、金品が残っているかもしれない。
どちらにしても、今の空腹から救われる要素が無いが、護身用のナイフか弓でも残っていればと、淡い期待で横倒しの馬車を覗く。
御者台のフォルダーにはナイフも弓も無かった。
防衛に使ったのか、野盗が持って行ってしまったのか、付近には落ちていないので諦める。
荷台の固定用ロープは無くなっていて、空き箱が転がっている上に死体も無いのだから、明らかに事後処理の上持ち去られている。
ここには食い物も金も残っていない事が確定したので先を急ぐ事にする。
昼前に馬車を見つけ、それから真っすぐ街道を歩いていたのだが、背後から何やら距離を縮めてくる足音がする。
ここまで誰ともすれ違っていないし、街道横で休んでいる人も見かけてはいない。
俺の足は遅くないので追いつくとすれば獣か、走り通すか、どちらにしても身の危険が迫っている要素しか思い当たりが無い。
馬車の所で拾った荷箱の残骸を構えて振り返ると、金色の毛玉がその勢いのまま俺の下腹に激突した。
死を覚悟した俺の耳に甲高い声が響く。
「ひとだぁぁっ!!」
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