第65話

 今回遠征で向かい拠点化する予定の異界の出入り口までたどり着いた小型飛空艇ゴーレム3隻は、上空からの艦砲射撃で異界周囲に作られた魔物の棲家への攻撃から戦闘が始まった。


 大量の砲弾や魔法が雨霰と降り注ぎ魔物のライオンの群れへと放たれ続け、射程の長い攻撃に晒されたライオンの魔物の群れは次々に倒れていく。


 「やっぱり遠距離攻撃で数を減らせるのは便利だな。それにここまでライオンたちの攻撃も届かないし。」


 ゴーレムたちの攻撃が行なえる射程ギリギリの上空を小型飛空艇ゴーレムは飛んでいる。


 その為、ライオンの魔物の中でも遠距離攻撃が可能な魔物は上空の小型飛空艇ゴーレムを狙って攻撃を行なうが、上空に向かって放った攻撃は届かない。


 ライオンの魔物は基本的に近接攻撃が得意な個体が多く、遠距離攻撃が可能なライオンの魔物でも遠距離攻撃はメインの攻撃方法ではない為、小型飛空艇ゴーレム3隻には1発も届かないのだろう。


 そうして上空からライオンの魔物の群れを削れるだけ削ると、3隻の小型飛空艇ゴーレムはライオンの魔物が現れる異界出入り口から離れて別の異界へと向かった。


 それからライオンの魔物の棲家の破壊を行なった小型飛空艇ゴーレム3隻は、次に鹿の魔物の棲家の破壊を行ない、最後にサイの魔物の棲家を破壊した。


 棲家の破壊を行なうと同時にかなりの魔物を討伐することに成功した遠征部隊のゴーレムたちは、それぞれ攻撃を行なったライオンの魔物の異界周辺に1隻、鹿の魔物の異界周辺に1隻、サイの魔物異界周辺に1隻と別れる。


 そして、その異界出入り口を中心にして拠点を作る為に遠征に出たゴーレム部隊は行動を起こす。が、問題が早速発生した。


 「ああ、生き残りが上級クラスの魔物に変化してるよ。」


 かなりの数の魔物を倒して次の場所に向かったせいで、ライオンの魔物と鹿の魔物の異界周辺には魔物石を食らって上級の魔物に変化した魔物たちが群れを成していた。


 幸いサイの魔物の異界周辺は先ほど攻撃を行なった為、倒した魔物からドロップした魔物石を摂取したサイの魔物は少なく、サイの魔物の中に進化した個体は片手で数えられる程度しかいない。


 「最上級クラスの魔物に進化した個体がいない事だけ良かったか。でも、上空の飛空艇ゴーレムまで届く攻撃が可能な個体が多くないか?」


 魔物の進化先はランダムかと思っていたが、もしかしたら何かしらの法則があるのかも知れない。


 そして、この進化した上級クラスの魔物たちは遠距離攻撃を主体にしているのでは無いかという見た目をしており、上空の小型飛空艇ゴーレムに攻撃が届くことから、進化した魔物たちは一方的に攻撃を受けた結果、あの様に進化したのだと思う。


 小型飛空艇ゴーレムも遠距離攻撃が可能な魔物を狙って攻撃を行ないながら、飛んでいる高度を少しずつ下げて着陸しようとする。


 「このままだと大破まで行きそうだな……よし、飛行型のゴーレムを送るか。」


 今日は活動する予定のない休暇の飛行型ゴーレム部隊の中から、遠征部隊の応援に向かっても構わないゴーレムだけを招集する。


 そして、招集に集まったゴーレムたちの中から部隊を編成すると、遠距離攻撃が可能なライオンの魔物と鹿の魔物を討伐する為の応援として遠征部隊に送った。


 送った複数の飛行型ゴーレム部隊は小型飛空艇ゴーレムの船内に出来た次元空間の出入り口から出ると、すぐに情報を周りのゴーレムから取得していく。


 情報交換が終わったゴーレムから先に小型飛空艇ゴーレムの甲板に出ると、それぞれ部隊でまとまって地上の遠距離攻撃を行なう魔物の群れに強襲を掛ける。


 そうすると地上からの遠距離攻撃が行なわれる数が減少する。だが、半分も減ってはいない。


 「魔物たちも護衛は付けているか。」


 地上の魔物の群れに攻撃を仕掛けた飛行型ゴーレム部隊の俯瞰視点で確認すると、どうやら遠距離攻撃が可能な魔物は近接攻撃が得意でないからと、近接攻撃が得意な魔物が守っていた。


 それでも遠距離攻撃を行なう魔物よりも護衛役の魔物の方が進化個体が少ない為、このまま時間を掛ければ充分に飛行型ゴーレム部隊だけでも勝てそうだ。


 けれど、最上級のゴーレムボディと武装を用意した飛行型ゴーレム部隊だけでも勝てるだろうが、それだけ時間を使えば倒した魔物からドロップした魔物石を摂取して進化する個体がまた現れる可能性もある。


 その為、遠征ゴーレム部隊はここは晒される攻撃が減った小型飛空艇ゴーレムが急降下してゴーレム部隊を地上に送り込み、一気に攻勢に出る様だ。


 それからしばらく経ち、小型飛空艇ゴーレムにかなりの被害が出てしまったが、ライオンの魔物の異界周辺と鹿の魔物の異界周辺とサイの魔物の異界周辺の魔物の掃討は完了した。


 「上級素材で作ったゴーレムも被害が出たか。飛空艇ゴーレムの被害は凄いし、これは修理が必要だな。」


 今回の戦いで被害が出たゴーレムは全て回収してすぐに修理を始める様に操作すると、次にゴーレムボディの修理を行なったゴーレムたちのボディを予備のゴーレムボディに変えて武装も新しい物に変えさせる。


 予備のゴーレムボディと武装を携えたゴーレムたちを再び遠征部隊へと合流させると、俺は拠点作りを行なえる生産ゴーレム部隊を呼び出した。


 生産ゴーレム部隊が全機集合するまでの間に、拠点作りで必要になる素材を素材生成を操作して一括で生成した。


 「これで集まったゴーレムたちに随時持って行って貰えばいいけど、今も警備しているゴーレムの幾つかに運び出させても構わないかな?」


 それぞれの異界周辺を警備しているゴーレム部隊のリーダーに警備中のゴーレムを使用して素材の持ち運びを行なえるかを聞いた。


 すると、異界の中に入って間引きしているゴーレムたちの中から素材の持ち運びを行なうゴーレムも出すとの返答が返される。


 俺は生産ゴーレム部隊が集まるまでの間に、それぞれの拠点化する予定の異界周辺に登録した次元空間の出入り口から素材をゴーレムたちに運ばせていく。


 それから生産ゴーレム部隊も集合すればすぐに現地に送り込み、早速生産ゴーレム部隊のゴーレムたちは拠点作りに入るのだった。


 そして、人が全くいないアフリカ大陸内部に3つの拠点が出来るのは、遠征部隊が向かってから2週間後のことだった。

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