第33話

 あれほどボロボロだと、あとボス狼からの攻撃をどれだけ受け止められるのだろうか?


 これはボス狼に負けるのではないかと焦る気持ちが出て来るなかで、ボス狼が立ち止まって遠吠えを行なおうと口を開けた。


 その時、サブ武装に魔法杖型武装を持つゴーレムたちが一斉にボス狼の口に向かって魔法を放つ。


 「アオーーッゴギャ!ギャッ、ウゥーーン!!!!」


 口の中に魔法の数々が命中した事により、仲間を呼ぶ遠吠えの妨害をゴーレムたちは成功した。


 妨害に成功したからか、辺りから遠吠えが聞こえる事はなく、空高く飛んでいる中型蜂ゴーレムの俯瞰視点から見える画面からでも追加の増援の狼の魔物が現れない。


 これで仲間を呼ばれている訳ではないと判断した俺は、増援の狼の魔物たちを倒していたゴーレムたちに追加の狼の魔物は居ない事を伝える。


 それを聞いた狼の魔物たちを相手にしていたゴーレムたちは、一斉にボス狼の元へと向かい始めた。


 その間にも盾型武装を構えるボロボロのゴーレムたちが、周りのゴーレムを守りながらボス狼からの攻撃を防いでいたが、1機のゴーレムがボス狼の攻撃を受け止め損ねる。


 ボス狼からの攻撃を受けて、受け止め損なったゴーレムは吹き飛ばされながら残っていた腕を欠損しながら地面を転がって行く。


 そんなゴーレムをボス狼は今までの鬱憤を込めて集中して狙い始めた。


 それに気が付いた他の盾型武装を持つゴーレムが守りに向かおうとするが、それよりも前にボス狼が両腕を欠損しているゴーレムに噛み付いた。


 そして、ボス狼はゴーレムたちに見せ付ける様に、徐々に咥えていたゴーレムを砕く為に顎に力を入れていく。


 「こんな行動も魔物は取るのか……あれがゴーレムだからといって随分と悪辣な事をするんだな……まあ、壊させないけど。」


 徐々にゴーレムボディが砕けてひび割れていく姿を見せびらかしているボス狼だった。


 だが、俺がゴーレムマスターのゴーレムを収納する力を使った事でいきなり噛み砕き途中のゴーレムが消えてしまう。


 咥えていたゴーレムが消えた事でボス狼は思いっきり歯と歯を打ち付けあってしまい、歯を打ち合った痛みといきなりゴーレムが消えた驚きで動きが止まってしまった。


 そうして動きが止まったボス狼に魔法杖型武装のゴーレムたちからの魔法攻撃や槍型武装の刺突が次々に命中していく。


 攻撃を受けて止まっていたボス狼も動き出し、その場から離れて行くが、そんなボス狼の意識の外から中型蜂ゴーレムたちが襲い掛かって来た。


 空中から急降下して張り付いて噛み付きながら毒針をボス狼に、中型蜂ゴーレムたちは突き刺していく。


 中型蜂ゴーレムたちは毒針を刺して毒を注入していくと、ようやくボス狼に毒が効き始めたのか、ボス狼の身体がふらふらとし始める。


 機敏に動き回っていたボス狼だったが、毒が身体に回ってからの動きは悪くなり、更に狼の魔物を倒して回っていたゴーレムたちが合流する事で確実にボス狼の死が近付いて来た。


 このままゴーレムたちがボス狼を倒すのだろうと思っていると、ボス狼は遠吠えではなく、物理的な威力のある咆哮を行なってくる。


 ビリビリとした咆哮はボス狼を中心にして衝撃波が放たれると、ボス狼の全身には赤いオーラが纏われた。


 真っ赤なオーラを纏ったボス狼は毒で弱った身体にも関わらず、その動きは毒を受ける前どころか、最初に出現した時と変わらない動きでゴーレムたちに攻撃を仕掛けて来た。


 盾型武装ゴーレムの数が1機減り、更に他の盾型武装ゴーレムたちもボロボロの現状では今のボス狼からの攻撃を受けきる事は出来ないだろう。


 一体どうすれば良いのかと、俯瞰視点の画面を見ている俺の方が焦るなかで、ゴーレムたちはこれを打開する手段を取り始める。


 ボロボロの盾型武装を持つゴーレムたちから傷付いていないゴーレムが盾型武装を借りてボス狼の攻撃を防ぎ始めた。


 けれど、今盾型武装を使っているゴーレムたちでは完全にボス狼からの攻撃を防ぐ事は出来なかった。


 序盤からボス狼からの攻撃を受けて学習したゴーレムと、攻撃に集中していたゴーレムの学習の違いのせいだろう。


 これをどうにかしないと、このままではボス狼に勝つ事は難しいと思い、俺は回収していたゴーレムに新しいボディと武装を渡して戦場に送った。


 そうして戦場に送ったゴーレムが代わりにボス狼からの攻撃を受けている間に、俺は盾型武装を使っていたゴーレムと情報交換をする様に命令を出す。


 これでボス狼からの攻撃を防ぐのにかなり有利になるだろうし、これなら今の赤いオーラを纏って強化されたボス狼に勝てると確信して俯瞰視点の映像を眺めて行った。


 交代で損傷の激しいゴーレムたちとの情報交換を終えて、ボス狼の攻撃の受け方を学んだゴーレムたちが盾型武装を使ってボス狼からの攻撃を防ぎ始めると、俺は全機のボロボロのゴーレムたちを一時帰還させて新しいゴーレムボディと武装を渡していく。


 レベルが1つも上がっていない予備のゴーレムボディだが、それでも中級素材で作られている為、なんとかなるだろうと送ると、すぐにゴーレムボディの高速修復を行なう。


 赤いオーラをボス狼が纏ってから10分ほど経ち、ボス狼だけじゃなくゴーレムたちが行なう攻撃も激しくなるなか、1機のゴーレムがボス狼の血だらけの胸部に槍型武装を深々と突き刺した。


 これがボス狼のトドメを刺す一撃になり、こうしてゴーレムたちは異界が成長し始めてから初めての異界攻略に成功するのだった。


 「はぁー、やっと勝てた。1時間以上も戦っていたのは初めてじゃないか?」


 時計の時間を確認して長い時間をゴーレムたちは戦っていたんだなと思いながら、俺はゴーレムたちにドロップアイテムの回収と宝箱のアイテムの回収を命じた。


 そうして白い柱の前に置かれた宝箱に向かうゴーレムとボス狼だった砂の山からドロップアイテムを探すゴーレムで分かれると、ゴーレムたちは俺の命令通りにアイテムの回収を行なって来る。


 アイテムの確保が終わった事を俯瞰視点の画面越しに確認した俺は、次元空間の出入り口を出現させて、ゴーレムたちの回収を行なった。


 次元空間に全てのゴーレムが戻って来ると、回収して来たアイテムを受け取り、俺はゴーレムたちのボディを予備のボディに交換して、ボス狼戦で使用したボディと武装を修理に出していく。

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