ひきこもりのゴーレムマスター

甲羅に籠る亀

第1話

 ニュースで梅雨明けが発表された7月21日、未来の世界でこの日は、これまでの世界が終わりを告げ、新たな世界に変わった記念すべき日だ。


 日本時間10時丁度に突如謎の声が、機械音で女性のような声をして世界中の人々の脳裏に響き渡る。


 『0000153世界がレベルアップしました。これより世界は変革します。知的生命体の皆様はより強くより賢くなり、これから起こる世界の変革に抗い強くなってください。それがいずれ起こる異世界大戦に生き残る力になりますから。その為に、これを渡します。』


 謎の声の話が終わると、世界中の人々の身体は光り輝き、そして祝福を授かった。


 そんな世界規模の出来事が起こる中、この話の主人公である三島悟は先ほどまで寝ていた布団の上から起き上がり、謎の声の話を聞いていた。


 「一体何が起こったんだ?幻聴だったのか?それとも、これは夢の中?」


 いきなり誰も居ない家の中で起こった謎の声に驚きながら起きた俺は、ほっぺたを摘んで感じた痛みに、これは夢ではないと気が付いた。


 「これ、身体が光ってるし、頭に何か知識が入り込んでる?」


 頭の中に知らない知識が流れ込んでいる中で、俺は知識が流れ込むのが治るまで布団の周りを探りながら見つけたリモコンでテレビを付けた。


 すると、生放送のテレビの画面にはタレントが今の俺と同じように光り輝いている。


 これは俺だけに起こっている事ではなく、他の人にも起こっている事だと分かり、俺だけに起きた特別なイベントでは無く、世界中で全ての人々に起きている事なんだと改めて納得する。


 そしてどれだけ時間が経ったのだろうか、テレビのタレントの光は収まったのに、未だに光り輝いて知識を送られていたが、やっと知識が流れ込まなくなり終わったのか、光り輝いていた身体から光は放たなくなる。


 「これが、俺が手に入れた祝福なのか?二つもあるが……?」


 俺が流し込まれて手に入れた知識は多く、それだけ渡されたこの祝福は強いのだろう。


 そう思い、得られた知識を使って祝福で得た力を使おうとした時、テレビやスマホからけたたましい音が鳴り響く。


 「な、なんだ!?」


 テレビ画面を見ながら近くに充電していたスマホを手に取り、未だに鳴り響くスマホを操作して大人しくさせると、俺は緊急速報を確認する。


 いきなりテレビ画面が切り替わり、政府からの発表が行なわれる。


 その話を聞くと、この出来事は世界規模で起こされている事で無闇矢鱈に得た力を人に使わない様にと言う事と、様々な地域で発生した黒い光の柱には近寄らない様にと言う事だった。


 「光の柱?そんな物が現れたのか。ここら辺にもあるのか?」


 そう言われて気になった俺は窓を開けてベランダに出ると、ベランダから見える景色には五つの黒い柱が空を目指すように生えていた。


 「な、なんだよ……あれ……。」


 唖然として見上げる黒い柱は一番近い場所だと、本当に近所だと言えるくらいの距離の位置に生えている。


 これはベランダだけじゃなく、玄関側からも確認しないとと思い、俺は急いで窓を閉めてから玄関に向かった。


 「こっちも……かよ……。」


 玄関側から見た景色にも黒い柱が天を目指して生えていた。その数は遠くの方も入れて8つも生えている。しかも、玄関側からの近所の近くにも黒い柱は生えており、こちらは二つも近くに生えている。


 「何なんだよ……。」


 あの黒い柱を見ると、身体の奥底から何か嫌な予感めいた物を感じてしまい、あれは見ていたくはないと言う思いが溢れ出て来る。


 玄関だけじゃなく部屋のあちこちの窓を鍵を掛けて閉め切っていると、テレビの方もまた慌ただしくなっていた。


 「あーもう!次は何があったんだよ!」


 不安な気持ちが溢れ出て来るのを抑えようとするが抑え切れない中、テレビ画面を見ると、あの黒い柱から人を襲う生き物が現れていた。


 何処かの黒い柱を中継していたようで、その黒い柱の周りを警備している警察官たちを小学生くらいの身長の緑色の肌をした生き物が錆びた刃物や木の棒を持って襲っていた。


 「きゃぁああ〜〜!!!!!!」


 「早くしろ!拳銃を使えぇええ!!!」


 「撃て!撃てぇえ!!!!」


 アナウンサーの女性の悲鳴や警察官の応戦しようとする声がテレビから聞こえていたが、いきなりテレビ画面が切り替わり、切り替わったテレビ画面には青ざめた表情をした男性のアナウンサーが出ていた。


 「一体、これから……この世界は、どうなるんだ…………。」


 身体から力が抜けるのを感じていると、外から悲鳴が聞こえて来た。それを聞いて、この家の近所にも黒い柱は生えていると思い出し気が付く。


 「いっ!?」


 このままだと死んでしまうと抜けていた力を入れる為、手を握り締めて近くの壁を叩き付ける。


 「痛い……大丈夫、俺は生き残れる!!」


 両手で顔を叩いて立ち上がると、俺は流れ込んで来た知識を使い、得た力を使い始めた。


 「これが、次元空間……。」


 目の前に真っ黒く長方形の形状の物が現れた。これが俺が得た祝福の一つの次元空間の入り口なんだと知識から認識する。


 この先は四畳ほどの何もない空間があるだけだが、その空間の中には空間に干渉することが出来る存在じゃなければ安全だと、俺は得た知識で分かる。


 その為、俺は何も躊躇する事なく生成したばかりの次元空間の中へと足を踏み入れた。


 そして入った次元空間の中は一面真っ白な壁と天井に床しかない部屋で物一つもない。


 「ここならあの黒い柱から出て来る得体の知れない生き物たちも入っては来れないぞ!!」


 だが、それでもこの何もない部屋で過ごしても数日しか持たない事は分かっている為、急いでこの部屋に食料や水などの生活に必要な物資を集める為に行動したい。


 だが、その前に俺が得た祝福の二つの内のもう一つの力を確かめて使う事を優先する。


 これが使える様ならそれだけで俺の生存確率は大幅に上昇するからだ。


 そして俺はもう一つの力を使おうと意識すると、脳裏にゴーレムマスターの力の使い方が思い浮かぶ。


 次元空間と同じ様に、既に一つだけだが使う事の出来るゴーレムがあり、俺はそのゴーレムを使う為にこの場に取り出した。


 すると、取り出されたゴーレムが何処からとも無く俺の前に現れるのだった。

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