第49話 探偵物語1

 その晩は会社の同僚と食事をして帰って来たので、お風呂に入って、そのまま自分の部屋で韓国ドラマを観ていた。


 そして一休みって感じでダイニングキッチンのテーブルでブルーベリー酢(最近ハマってる)を飲んでいたら、泰造が部屋がからで出来て、


「みさきは韓国ドラマばかり観てるな」


「なんでわかるの?」


「部屋にこもってる時はたいていそうだろ」


 泰造もテーブルで缶ビールを飲み始めた。


「俺もいろんなドラマを観てきたけど、一番影響を受けたドラマは、松田優作の探偵物語だな」


「そうなんだ」


「松田優作が演じる工藤俊作って探偵はとてもスタイリッシュなんだ。


 いつも黒いスーツに赤いシャツとサスペンダー、


 黒いソフト帽をかぶって黒いサングラスをかけてる。


 で、移動はベスパっていう外国のスクーターだ。


 俺が中学二年の時のドラマなんだが、そのスタイルにすげえ憧れたもんだ。


 でも同じクラスの仲間は裏番組の、三男三女婿一匹Ⅲを見てる奴が多かったな。


 森繁久彌と杉村春子が出てたホームドラマだ。今ではすっかり司会者の関口宏が俳優で出てたな。主題歌を松山千春が歌ってた」


「へー」


「探偵物語に戻るが、共演の成田三樹夫の服部刑事と、山西道広の松本刑事がいい味出しててな、


 服部刑事はいつも工藤っ!って呼び捨てにしてるのに、弱みがあったり、何か頼みごとがあると


『工藤ちゃん』って、途端にちゃん付けする、あの手のひら返しが好きだったな」


「そうなんだ」


「工藤の探偵事務所の隣りにはナンシーと、かほりっていう、モデルと女優の卵が住んでて、


 工藤の事務所を自分の部屋のように出入りしていて、時には工藤の仕事の手伝いなんかもするんだ。


 ちなみにかほり役の竹田かほりは、後に甲斐よしひろと結婚したな」


「甲斐よしひろ?」


「まあいいや。で、他にも脇役で、情報屋のイイヅカや宝石商の山崎、


 あとはこのドラマ最大のスター、イレズミ者、とかいるんだが……ちょっとトイレ行ってから話そう」


「続くんかい!」

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