第34話 うまか棒
泰造のストーカー話に付き合って、私は缶ビールを3本飲んだ。泰造はずっとハイボールだ。何杯飲んだか正の字でメモしてるのが笑える。飲みすぎないように自分でも気にしているのだろう。
私は酔っ払うといつも締めにアイスが食べたくなり、
冷凍庫から私はハーゲンダッツのラムレーズンを出して、泰造はガリガリくんを出した。
「酔っぱらって食べるアイスは最高だな」
「うん」ハーゲンダッツを木のへらですくいながら言った。
「昔、ガリガリくんみたいなソーダのアイスで、二本棒が刺さってるのがあって、二つに割って友達と食べたな」
「パピコを二つに割る感じかな」
「そうそう。あとは当たり付きのホームランバーとかな」
「へー」
「他にも名前だけすごいインパクトがあった雪印の『掘ったイモいじくるな』ってのもあったな」
「どんなアイスよ?」
「名前はWhat time is it now.をもじっていて、バニラ味の大判のアイスなんだが、味は名前以上のインパクトはなかった気がする」
「そっか」
「カップのアイスだと宝石箱ってのがあったな。
バニラアイスの中に宝石みたいな赤や黄色や緑の氷の粒が入っててな、ピンクレディがCMしてた」
「なんか昭和って感じする」
「あと変わり種だと赤城のラーメンアイスってのがあったな」
「ラーメンアイス?」
「ラーメンの麺ぐらいの細さで固まったアイスの上に、ゼリーのナルトやメンマが乗っかってた」
「へー」
「これはカップではないが、風船みたいなのにアイスが詰まったタマゴアイスもあったな。これはゾクにおっぱいアイスとも呼ばれていた。
そのおっぱいアイスを最初はチューチュー吸うんだけど、すぐに風船の部分を歯でガリッと噛んで、
デロッと出てきたアイスを食べたものだったな」
「おっぱいアイスとか言うな。エロイな」
「当時はそう呼んでいたんだから仕方ないだろ。そうだ、棒のアイスで忘れちゃいけないのが、うまか棒だな」
「うまい棒じゃなくて?」
「若い奴はみんなそう言うな。元々はうまか棒の方がメジャーで、低音が効いた『うま~か棒!』ってCMの声が有名だったな。
チョコレートでコーティングされたスティックアイスで、味が三種類くらいあるんだが、俺はバナナ味が一番好きだったな」
「チョコバナナの先駆けだね」
「まあこうやって親子で晩酌してアイスを食べるのもいつまで続くかな」
泰造が寂しそうな顔で言った。
結婚したら私は出て行くのだ。泰造と暮らしたこの家から。
「嫁に行くのはまだまだ先だよ」
青木にはまだプロポーズもされてないし、結婚なんてすぐには考えられない。
「そっか。まだまだ一緒に晩酌が出来そうだな」
泰造がしみじみとした顔で笑ったから、なんだか泣きそうになった。
「なんだ泣いてるのか?」
「アイスで頭がキーンってしたんだよ!」
私は誤魔化して言った。
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