第15話 女子に初めて借りたマンガ本

「みさきは男子にマンガを借りたことはあるか?」


「ん? 鬼滅の刃は会社の男の子から全巻借りて読んだけど」


「そうか。俺は小学生の頃だが、隣の席の女の子と妙に気が合ってな、マンガの話になった時に俺は少年マンガしか読んだことなかったから、


「これ面白いよ」とその子は何冊か少女マンガを貸してくれたんだけど、それが俺にとって女子から借りた初めてのマンガで、初めて読む少女マンガだったのだ!

そのマンガとは!」


「別にじらさなくていいから」


「すまん。そのマンガとは土田よしこの『きみどりみどろあおみどろ』『つる姫じゃ~っ!』と、弓月光の『ボクの初体験』1.2巻だ!」


「まったく、わからないんだけど」


「土田よしこは赤塚不二夫の元アシスタントで、ギャグ漫画の名手だ。


つる姫じゃ~っ! にしても、姫がカッパ禿で、裁縫するとすべて雑巾になるとか設定が面白かったな。


つる姫は結構、後になってアニメ化されたな。俺が初めて単行本を読んだのが10歳くらいで、アニメ化が25歳の時だから15年も間があった」


「そうなんだ」

「そして弓月光のボクの初体験は、主人公の宮田英太郎が女子たちにからかわれ、いじめられたことを苦に自殺するのだが、


海岸で仮死状態の彼を、脳腫瘍で17歳の妻・春奈を亡くした、マッドサイエンティストみたいな風貌の人浦狂児が見つけ、


彼の脳を自分の死んだ妻に移植してしまう、という話で、体は女だけど脳は英太郎のままだから、


何かにつけて抱きついてキスをしようとする狂児を嫌がりながらも同居して、


自分を自殺に追い込んだ女子たちに復讐しようとする、異色のラブコメって感じだったな。


後にフジテレビの月曜ドラマランドでドラマ化され、英太郎は宮川一朗太、狂児が秋野太作、春奈が水谷麻里だった。


マンガは全3巻で、その子は1.2巻しか持ってなかったから、


続きがどうしても読みたくなった俺は、自分で買ってその子に逆に貸してあげた記憶があるな」


「そうなんだ……でも泰造と少女マンガって似合わねー!」


「そんなことないぞ。最近も「君に届け」と「アオハライド」と「四月は君の嘘」を全巻読んだぞ」


「それ全部、私のじゃん! 勝手に読むなよ!」

「ページの間に何か封筒が挟まってたぞ。名前は書いてなかったけど」


「それは……別にいいじゃん」

彼氏がくれたバースデーカードを大好きなマンガのページに挟んでいたのだった。

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