キミ恋し
小説太郎
第1話
雨がしとしと降っていた。
男はもう何も考えたくなかった。
大好きだった女にフラれて一週間になる。
その間、男は女のことばかり考えていた。
あんなに仲が良かったのになぜフラれてしまったのだろうか?
デートに誘った所が、公園ならまだしも近所の空き地だったのがいけなかったのだろうか?
でも、あの時は女もすぐ冗談を理解してケタケタ笑ってくれたではないか?
それとも、女の誕生日のプレゼントにあげたものが、さんざん期待させておいて、しじみの貝殻だったのがいけなかったのだろうか? それも浜辺で拾ったものならまだしも、スーパーで買ったしじみを具にして作った味噌汁の残りカスだったことを正直に告白したのがいけなかったのだろうか?
しかし、あの時も女は直ちに冗談を理解して大いに笑ってくれたではないか?
何がどういけなかったのだろうか?
“ 女の気持ちはわからぬ。謎だらけだ。” と男は思った。
一週間前、二人は馴染みの喫茶店で会った。
そこで楽しい会話が始まると思いきや、女がいきなり言ってきた。
「 私、よくよく考えたんだけど、あなたと私、もう別れた方がいいと思うの。」
「 どうしたんだい? 急に。俺の何がいけなかったのか言ってくれよ。」
「 それが自分でわからないようではダメね。早くわかる人になって、あなたにふさわしい彼女を見つけてね。」
「 他の女を好きになんてなれないよ。俺にはおまえしかいないんだ。」
「 覆水盆に返らずって言うでしょ。あなたと私の関係はもうおしまいなのよ。じゃあね。」
女はそう言うなり、レジで自分の勘定を払って早々に店を出て行った。
女の断わり方があまりにも冷たかったので、男は女の後を追う気にはなれなかった。
ただ、虚しい気持ちで心がいっぱいになった。
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