第2話
明日香はカナジと呼ばれていた。
金意地をもじってのものらしい。
金属のように固い意地っ張り
という意味だ。
カナジは十六才の
ポニーテールが似合う
可愛い女の子だ。
カナジには夢があった
小説家としてデビュウーし
ベストセラー作家の仲間入りを
することだ。
「でも、なにを書いていいのか
わからないのよねえ」
症状の少し快復したカナジ
はよく親友のアガサに愚痴を零した。
「カナジのこと書けばいいんじゃない」
「えっ」
「交通事故で植物状態になって
恋人に逃げられた顛末をよ」
「イヤだわ、そんなの」
「どうして」
「だってバツがわるいもの」
「甘いなあ」
アガサが一刀両断した。
「たいてい作家はまず自己体験を小説に
するらしいわよ」
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