第3話:俺の推し(かもしれない娘)が俺を見ている

 ある日、俺の部活(物理部)に新しい子が来た。

 その子は校内でも全校集会でも見かけたことがなかったから一瞬転校生かと思ったが、この学校にそもそも転校生なんて言う概念は存在しなかった(これでも俺の学校は偏差値が高い私立の中高一貫校なのだ)。多分、俺が見かけていないだけだろう。

「はじめましてっ!星屑椿です!」

 一目見て、一瞬天使かと錯覚する程にこの子___椿は綺麗だった。

 真っ黒な黒髪ボブ。少し薄いグレーの大きな瞳。陶器のような白く柔らかそうな肌。艷やかな赤い小さな唇。本当に、まるで天使としか形容し難い整った顔に、部員誰もが目を奪われた。

 そして、俺は気が付いてしまった。もう夏だというのに長袖シャツを来た椿の腕に、紅い切り傷のようなものがぺるたそと同じところにあることを。


(この娘まさか……ぺるたそ?)


 そして、俺は気が付かなかった。椿が俺をじっと見ていたことに。

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