第2話 十歳で雷と氷と炎と風と光の魔法を使えるようになった

 前世からの悲願。それがようやく叶ったのだ。

 だが、さっきのウサギのように自由自在とはいかない。

 魔法回路が開いても、使いこなせるようになるには練習が必要らしい。

 むしろ望むところだ。

 前世において、膨大な修行の果てにいっぱしの剣技を会得したという自負がある。積み重ねたからこそ、誇りを持てる。

 剣技と魔法の違いはあるが、通ずるところがあるはず。


「試行錯誤を重ねるのは慣れています。さっそく練習です!」


 電撃の威力も精度も日々増していく。

 楽しくて仕方ない。

 やがて剣を使わなくても、魔法だけでモンスターを倒せるようになった。


――――――

氷オオカミを捕食しました。

『氷属性』の魔法回路を開きます。

――――――

ファイヤーライガーを捕食しました。

『炎属性』の魔法回路を開きます。

――――――

レッサーワイバーンを捕食しました。

『風属性』の魔法回路を開きます。

――――――

知識の目玉を捕食しました。

『鑑定』の魔法回路を開きます。

――――――


 十歳になる頃には、様々な魔法を使いこなせるようになった。

 誰にも告げずに、一人でモンスターを狩りまくっているだけなので、褒めてくれる人はいない。

 けれど充実している。


「コトミール。お前、相変わらず一人で遊んでるのか? ふふん、かわいそうな奴め。お前の剣技が凄いのは認めるが、やはり魔法を使えなきゃ最強にはなれないぞ。お前はどんなに頑張っても守られる側なんだ。俺は魔法が上手くなったぞ。もう電撃ウサギに負けないし……お前を守れる。なにかの間違いで俺とお前が結婚しても安心だなぁ! 俺のそばにいれば、どんなモンスターが出ても平気だ!」


「私だって、魔法を使えるようになりましたよ」


「は? 魔法回路がないのに使えるわけないだろ! 魔法回路は生まれつき決まってて、努力したって増えないんだ! 使えるって言うならやってみせろよ!」


「じゃあ、こんな感じで」


「なにっ!? 雷に風に炎に氷……! それを連続で放つなんて、お前、どんな魔力してるんだ! 魔力回路がないはずなのに、どうしてそんなに使えるっ?」


「秘密です」


「く、くそ! 見てろよ……お前より上手に魔法を使えるようになってやるからな。あと剣も! もしコトミールと俺が急に結婚することになっても守ってやれるように!」


「なんか、私と結婚したいみたいに聞こえますね」


「は、はぁぁぁ!? んなわけねーだろっ!」


「ですよね。失礼しました」


 コトミールは頭を下げて立ち去る。

 前世でも異性と付き合った経験は皆無。自分には可愛げがないと自覚している。自分を好きになる人がいるとは思えない。

 村長の孫はコトミールをからかうために、あんなことを言っているのだ。そのくらい分かる。


「むむ? タンポポの綿毛みたいなのが漂ってます。淡く光ってます。鑑定魔法……なるほど、ウィルオウィスプという名の光属性モンスターですか。とても美味しそう……」


 経験上、美味しそうと感じたモンスターを食べるといいことが起きる。

 コトミールは電撃で敵を痺れさせ、その隙に接近。ズズッと吸い込む。綿飴のような触感だ。


――――――

ウィルオウィスプを捕食しました。

『光属性』の魔法回路を開きます。

――――――


「光の魔法ってどんなことができるんでしょう? また色々試すのが楽しみです。ふふふ」

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