第10話 新人戦_開催


〜集会場〜


俺達3人は各々13:00ぐらいに集会場前に集合し、いつも通り依頼掲示板を見に行こうとしていた。

だが何だがいつもと違う雰囲気が漂っていた。

見ない顔が多々見られ、何処かそわそわしている冒険者達が沢山居た。


「なんじゃこの変な感じ」

「今日から確か新人戦だった気がします」

「新人戦……?」


新人戦という聞いたことない単語を頭の片隅に入れながら周りを見ていると、集会場のお姉さんがこちらに近づいてきた。


「お待ちしておりました!数々の戦績を残して麻痺っていましたが、結成してすぐのパーティでしたよね!」

「あの……もしかして新人戦ってやつですか?」


俺はもしかしてと思い、お姉さんに質問した。


「よくご存知で!でも名前だけでルールを知らないと思いますので、説明しますね!」


お姉さんは淡々と説明をし始めた。


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新人戦

〜月1に開催される新人冒険者対決〜

・ルール

指定されているマップにて、最後のパーティが残るまで闘い合うバトルロワイヤル。

・脱落判定

相手が致命傷を受けた場合、強制的に集会場(緊急即時医療室)に転送。死亡の恐れは0%なので心配無し。

・スペシャルスキル

1パーティーに1度だけ『蘇生』が使用可能。

脱落したメンバー1名を蘇生させることが出来る。

・勝利報酬

100万ガロンを贈呈。

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「ルール説明は以上です!質問はございますか?」

「特に無いぞ俺は。お前らは?」


2人はフルフルと首を横に振る。特に無いそうだ。


「では集会場のテーブルにお掛けになってください!」


そういうとお姉さんはカウンターに戻って行った。


「……見た感じ10パーティほど居るのぉ」

「そうだね。私達より強いのかな……」


するとゾエラはサーっと血の気が引いた表情をし、俺の方を向く。

俺は驚きどうしたのか聞こうとしたら、震えた両手で俺の服を握る。

振動がこちらにも伝わってきた。ガクガクと震えているゾエラなんて見たこともない為、俺とガルドは驚いていた。


「ど、どうしたんじゃゾエ……」

「2人とも……この新人戦、棄権しよう」


ゾエラの口からそんな言葉が出るなんて、思ってもなかった。顔が真っ白になり始める。


「棄権!?……俺たちの活躍が見せれる場じゃ……」


するとダッと集会場の門に向かって走っていた。


……突然すぎた。少し棒立ちする俺達。

「タケル、追いかけるぞ」

「あ、あぁ」



〜宿〜


集会場付近、フルトロン付近にはいなかった。最後にいる場所としては俺達の宿。


「ゾエラ!」


ドアを開けると、リビングの椅子で座っていた。

いつもの元気がなく、目の光も無くなっていた。


「ゾエラ、何を見たんじゃ?教えてくれ。」

「……がいた。」


口がパクパクと開き、小声で喋り始めた。


「……?」

「……昔、私を殺そうとしたいじめっ子がいた……」

「……は?」


俺たちは驚きのあまり声が出なかった。あんなに笑顔が絶えないゾエラが虐められていたなんて。


「……どいつじゃ」

「……」

「どいつじゃ!!!!」


ガルドは怒りをゾエラにぶつけてしまっている。

仲間思いのガルドは許せる事案では無い。


「ガルド落ち着け。ゾエラ、新人戦どうする」


首を横に振る。


「……ヌシ、なぜ出ないんじゃ?復讐すればよいではないか。今のヌシは強いんじゃぞ?」

「通用しないの……私の能力じゃ……」


能力のマウント合戦か。バフをかけるゾエラよりも強い能力なのか……?


「ゾエラ、そいつの能力はどんな能力だ?」

「|人名支配(コントロールネーム)。読んだ対象の人物を思うがまま操れる能力……」


大体話はわかった。ゾエラは昔、その能力で虐められてたことを。


「なんじゃその能力!ワシがぶっ飛ばしてやる!」

「ゾエラ、そいつの外見を教えてくれ」

「……白い髪で背は標準……パーティメンバーは2人だった」


それを聞いた俺は立ち上がる。急いでガルドの腕を掴み宿を出た。


「ゾエラ。お前が今まで受けてきたもん……全部そいつの顔面に叩きつけてやる」

「ヌシはそこで休憩しといても良いぞ!けど……!」

「「そいつが負けるとこ見たけりゃ来い!」」


大切な仲間を持ち、今まで受けてきた虐めの思い出が割れる音がした。

頼もしい言葉、仲間。ゾエラは自然と涙が出ていた。

しばらく泣いていよう……そうゾエラは思いつつ泣いた。



〜集会場〜


「皆様お待たせ致しました!新人戦の開催です!」


集会場のお姉さんはメガホンを片手に大声で喋り始めた。


「メガホンの意味ないだろ」

「ルールは簡単!殺さずに同期を倒し1位を目指すのみ!報酬は100万ガロン!!」


100万ガロンの言葉で冒険者達は一斉に歓声を上げる。


「のぅ。あいつじゃないか?」


ガルドは小声で俺に声をかける。ガルドが指を指した方向は、あのゾエラが言っていた人物。

白い髪で背は標準……ビンゴだ。


「すんませーん!」


突然その白い髪の男が喋り始めた為、俺達は驚いてしまった。ガン見してたのがバレたか?!


「どうせこいつら雑魚いんで100万くれます?」


何を言い出すかと思えば、自分最強宣言しやがったぞ?!

余裕を持っているそいつは当然他の冒険者からバッシングをうける。


「ふざけんな!」

「まだわからんだろ!」


飛び交う罵声。だがそいつは揺るがないでいた。

それどころかノートを取りだして、各冒険者の胸に付いているバッジを見て書き始めた。

黙々と書き始める白い髪の男。他の冒険者達はその光景を不思議そうに見ていた。


「おい!お前何を!」

「フランデル・ガレ……」


一人の男が殴りこもうとした瞬間、男に名前を呼ばれた。

その時、男は攻撃を辞めその場で棒立ち状態になった。


「棄権しろ」

「はい」


するとフランデル・ガレという人物は棄権用紙を書き始め、パーティメンバーと共に集会場を出ていった。

当然同じパーティメンバーも止めるが、聞く耳を持たず……。


集会場の門が閉じた瞬間ざわざわと冒険者達が驚き始める。


「今書かれた奴らは全て俺の支配下だぜぇ!?こうなりたくなけりゃ、素直に自分から棄権するこったな!」


集会場のお姉さんも流石に止めに入ろうとする。

だが俺はお姉さんの腕を掴み止めた。


「離してください!こんな状況ダメです!」

「ちょっと待って!貴女の名前も書かれたら新人戦自体が無くなってしまうっすよ!」


お姉さんはその言葉を聞き、素直に棄権していくパーティーを見ていくしか無かった。


〜〜〜〜〜

残ったメンバーは俺達と白髪男パーティ。

新人戦と言うよりかこれはもうタイマンだ。

いきなり決勝戦的な感覚だぞこれ……。


「なぁ、お前ら棄権しないの?」

「誰がするか、チャラチャラした奴らの圧なんて無いに等しいじゃろ」


目の前にはゾエラを虐めた張本人が立っている。

こいつは俺の『対象内』なのかどうかも不明。

名前を書かれていたらニブイチだ。覚悟を決めるしかない。


「まぁいいや、会場はどこなんだよ」


白髪の男は集会場のお姉さんに聞く。聞く態度もでかいが……。

しかしお姉さんは動じずに礼儀良く男に伝えた。


「ご案内します」


そう言うと後ろを振り向きある部屋に案内していく。

それに続いて白髪の男達は着いて行った。


「俺達も行こう」

「そうじゃな

俺達は互いに見つめ合い頷く。覚悟は出来てる。

ゾエラの涙を引っこめる為に、俺達は闘う。



〜試合会場〜


「さぁ!始まりました新人戦!今回はとある男がほとんどの冒険者を棄権させた為!2vs2の試合に変更となっております!!」


試合の様子は集会場のビッグモニターから閲覧可能だ。

洗脳を解除された冒険者達も見に来ていた。


「しかーし!1人ずつに別れ戦闘して頂きます!」


実況者がくじを引きその結果をマイクを通して話した。


「タケルvsダズとガルドvsルルマです!!」


俺は待機所に設置されている電光掲示板でダズという人物を見たが、白髪ではなかった。


そう、あの白髪男……ルルマと勝負するのはガルドだ。

明らかに不利な状況……ガルドが耐えるか洗脳をかけられる前に倒せば問題は無い。

だがガルドの名前が書かれていた場合、もう負けは確定に近いと言っていい。


「ガルド……頼んだぞ……!」


再び会場に女性の声が響き渡る。


「さーて!各々ワープさせますので少々お待ちを!」


それを聞いた瞬間、俺はもう建物の中にワープされていた。

前を見るとそこにはダズが立っていた。


「お前がダズってやつか?よろしくな」

「馴れ合うつもりは無い」


一方その頃、ガルドはでこぼこした岩場にワープしていた。


「んぉ、足場悪いのぅ……」

「まずはお前か。始まった瞬間に負けてもらうぜ?」


ルルマはノートを取り出し、ガルドの名前を探す。

ワープが完了した為、再び女性の声が響き渡る。


「ワープした為〜!?試合を開始するぞ〜!?」


やけにテンション高いな。


「実況はこの集会場のお姉さんマドンナこと、プリスさんと〜!?」

「解説のエオールです」


いや解説者テンション低いな。

4人はゴクリと息を飲む。


「準備はいいか〜!?よぉいスタート!!!」


ホイッスルと共にゾエラを助ける戦いが始まった。

待ってろゾエラ。見てろよゾエラ。

今お前の仲間がぶっ飛ばしに行くからよ!

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