第44話・千夜一夜物語 1

大広間に入るとそこには282の千夜一夜物語があった。

あったと言ったのは浮いてる物、激しく回転してる物、消えたり出たりしてる物、と様々だったから。

一つ一つ本だったり球だったりトゲトゲしたり大きい岩っぽいのまである。

色も様々。全ての色があるんじゃないかってくらいカラフル。

あ、でも色って白だけで300色あるんだっけ?

「これが全部集まった千夜一夜物語だよぉ」

「・・・・凄い」

「これが・・・・」

「この世じゃねぇみてぇだ・・・」

「今まで盗んだどの宝より綺麗だ」

「ボクの毒より良い色」

「壮観ですな」

「おお・・・」

「マジかこれ・・・・」

皆思わず声が出る。

「凄いでしょうぉクロちゃん♪」

「この白いのは何ですか?煙?」

大広間の中心からある一定の範囲に薄い白い靄みたいなモノが漂ってる。千夜一夜物語は全てその中に納まっている。

「この靄は千夜一夜物語が全部揃ったら起きる現象でぇこの靄の中に入ったら物語が一から始まるようになってるぅ」

皆の緊張感が増す。

俺なんか足が震えないように我慢するので精一杯!

「さぁ行こうかぁ」

シンドバットさんを先頭に靄の中に入っていく。

行くんだ、千夜一夜物語の中へ、願いを叶える為に。

靄の中は思ってたより濃い。さっきまで隣を歩いていたアラジンさんの姿が影しか見えない。

「天使大丈夫ですか?」

「ありがとうございます。大丈夫です」

声は聞こえる。足元も特に問題はない。

「何も見えねぇ!」

「ヒゲうるさい!」

「しかし1つの時と全然違いますね、シンドバット様」

「そうだねぇまだ物語始まらないねぇ」

「バイコどこ行った?また迷子か?」

「またってなんだ!」

皆余裕そうだ、良かった。

それからどのくらい歩いただろう。結構歩いたのか皆何も喋らなくなっていた。

そろそろ大広間の端に着くんじゃないか?

というかまだ着いていないのが不思議だ。大広間っていってもこんなに広かったか?

「あのアラジンさん」

見えない。もう影も見えない。

「アラジンさん!」

返事がない!

「バイコさん!アーズさん!バイオさん!」

誰も答えない!

「シンドバ!モルジアナさん!アリババさん!カシムさん!」

誰も答えない!!

俺だけ逸れた!?それともここはもう千夜一夜物語の話を見せられてる!?

話の中ならこの前と違い過ぎるし俺も意志で動けるはおかしい!

そういう話と言われればそれまでだけど。

訳が分からない!どうする!?戻るか?でも方向が分からない!後ろを向いてもそこが本当に真後ろか自信がない!

それほどの靄!ダメだ!行くしかない!けどこのままだったらどうする!?

でも俺は魔法一つしか使えないし、まともに使えないし!

ヤバ、詰んだ。

俺は一人だと何て無力・・・・・。

分かってたけど何にも出来ない・・・・。

どこにいても何も出来ない・・・・。

ん?影?少し揺らいだ!誰かいる!

俺は走る!その影の方へ!!

無意識に手を伸ばして影を掴む!

「うわっ!?ビックリしたぁ〜君誰??」

誰!??

そこにいたのは真ん中分けの眼鏡の方。

「え?何で?どうしたの〜こんな所で〜??」

「あの、俺、僕はこの靄に迷い込んでしまって・・・」

「え〜そんなの事あるかな〜あるか?ないか?まぁ大変だったね〜」

「あのあなたはここで何を??」

「自分はここに住んでるんですよ〜」

「住んでる!?」

「一応ランプの魔神やらしてもらってるんで〜」

・・・見つけちゃった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る