第41話・チームクロちゃんとチームシンドバッド

「で、その後はアブー君を連れて帰ってぇグランド語をマスターしたバイコ君とエア語をマスターしたアラジンと教王とアブー君にも手伝ってもらってぇ千夜一夜物語探しって感じかなぁ」

そうお茶を飲みながら話してくれるシンドバットさん。

俺達は今お互いの報告を兼ねて大食堂でモルジアナさんの夕食を食べている。

って大事な所を飛ばしてるよシンドバッドさん!

「マスター!どうですか、俺のグランド語!」

「まだカタコトになりがちでしょう、僕のエア語は完璧ですよ天使」

分からん!全部日本語に聞こえる。

「ん~最高です!」

「俺に言ったんだよ、今の」

「僕ですよ」

バイコさんとアラジンさんが会話してる!お~新鮮!

「とまぁそんな所かなぁ。とりあえずこれで千夜一夜物語は全部揃ったよぉ」

いや終わらないで!すっごい気になる所だけ話してないじゃん!

「あの~それで教王とアブーさんはどうなったんですか?」

「ん~アブー君は私達の話を聞いて満足してくれたみたいで素直に教王の所に戻ってくれたよぉ」

「それは良かったです!」

と表面では答えるがシンドバッドさんは私達と言った。

シンドバッドさんもアブーさんに話をしたのだろうか?

アーズさんの答え、バイオさんの答え、シンドバッドさんの答え。

いなかったらしいけどバイコさん、アラジンんの答えも知りたい。

気になる事は沢山ある。

でも、ここで聞いて全てを答えてくれるのだろうか?

それは分からない。

気になるけどこの話はこれ以上は進まないと思う。


俺がこの時の話の内容を知るのはもっと先に話。


「千夜一夜物語収集終了おめでとうございます、シンドバッド様。してこの後はどのような事を?」

カシムさんが聞く。

「早速千夜一夜物語を一気観しようぅ。さっさとランプの魔神を倒して願いを叶えようじゃないかぁ」

「早いですね」

「早くないよぉアラジン。ここまで長かったぁ」

俺はシンドバッドさんがいつから千夜一夜物語を集めてるのか知らない。

それは本当に長かったと思う。

実際の時間より体感はもっともっと・・・。

ランプの魔神がどういうのかは知らないけど、シンドバッドさん含めてこのメンツで負ける気はしない。

シンドバッドさん一人でも充分だと思うし。

今日、シンドバッドさんの願いは叶う。

俺は・・・どうしたいのだろう。

決めた気持ちがまたブレ始めてる。この前の探索から。

「じゃあ1時間後大広間に集合でぇ。皆んな何があっても大丈夫なように準備しといてねぇ」

俺達はその場で解散した。

部屋に戻りベッドに倒れ込む。モヤモヤが消えない。

覚悟を決めなきゃなのに。ちゃんとしなきゃなのに。

「悩み事ですか、天使?」

当然のように隣に寝ているアラジンさん。

「うああああ~~~~~~!!!!?いつから!?」

「最初から」

「怖いわ!!」

「そうだよな、怖いよな。場所変われアラジン!」

「いやマスターの隣は俺だろう!」

「いやボクだ!」

「全員違うわ!当然のようにいるけど!皆んなそれぞれ部屋あるでしょ!」

「「「「まぁまぁまぁまぁ」」」」

こんな時だけ団結力があるなこの人達!

「それで何を悩んでいたのですか?天使」

「!・・・いや」

話すべきか、でも・・・・。

「今日俺は商業の村に行ったんですよ、それで、その・・・シンドバッドさんに良くない、その感情を持つ方に会って・・・」

「あーあのテロの村か」

アーズさんが眉間に皺を寄せながら言う。

「テロ?」

「あの村のシンドバッドを快く思わない商業者が若者を煽動して使い捨ての様にしてこのグランドの中央で建物の爆破、無差別に人を襲うなどのテロ活動をしたんです」

アラジンさんが説明してくれる。

「酷かったぜあの事件。テロするガキの鎮圧に俺達賞金稼ぎまで雇ったんだぜ、王族は」

「俺達も迷惑を受けたな、バイオ」

「ああ、黒幕かと疑われて大変だった。ボクらが何をしたというんだ」

「まったくだ!」

いや盗賊でしょ、君達。

「それでテロは鎮圧出来たのですが、被害の大きさからテロ活動した若者は殆どが粛清されまして」

「あのおじいさんはその人達の家族か・・・。そのあとはどうなったんですか?テロリストの家族とかは?」

「一族郎党皆殺しを唱える高官もいましたがシンドバッドが止めました。悪いのは個人だと」

「まぁそれで家族の恨みがなくなる訳じゃねぇよな」

「理由の説明とかは?」

「したって納得はしないだろう。ボクもご主人様がそんなに目にあったら犯人をどうやってもぶち殺す!」

「それに本当に商業者の妬みから始まったかなんて分からないからな」

「バイオ、シンドバッドが先に手を出したと?」

「真実はどこかって話だ。結局テロリスト側は全滅。王族だけの話じゃ良くて真実は半分しか分からん」

どちらが悪いかどちらも悪くないか。正義はどこか。本当の悪人がいたか。

実際に見ないと真実は分からない。

だからこの話の真実は永久に分からない。

自分で見たものが真実とは限らない。

なら人は何を信じていけば良いのか?

俺は何を信じて何をするべきなのか?

分からない。

・・・・話が大き過ぎる。自分の事も分からないのにテロとか世界的なの事なんて余計に分からない。

セカイ系じゃないんだから。

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