第4話

気持ちを切り替えて、俺は学校へと向かう。

神崎は割と都会な所に住んでいるので、辺りには店やビルが立ち並んでいる。

まぁそんなことはどうでも良くて、とりあえず学校へ着く。

校門には陽介がいた。

「あ、勇也!」

飼い主を見つけた犬のように、陽介は俺の傍に来る。

「おはよう、勇也。

今朝はちょっと遅かったようだけど…何かあったの?」

「いや、別に。寝坊しただけだよ」

「そっか、よかった」

陽介と会った俺は、そのまま教室へと向かう。

教室に入る。亀井はまだ来ていないようだ。

少しほっとする。


しばらくして、先生がやって来た。もうすぐ授業が始まろうとしているのに亀井はまだ来ていない。

「おいおい…入学早々から遅刻か?」

そんなことを言っていると、教室のドアが開く。

亀井だ。亀井が遅れてやってきた。

マジか、本当に遅刻してきたよ。

「あら、亀井くん。遅刻かしら」

「…すんません」

「次から気をつけるように…さ、席に着いて。

そろそろ授業を始めるわよ」

「…はい」

亀井のやつ、なんだか機嫌が悪そうだが…

何かあったのだろうか。とそんなことを考えていると、

亀井が俺を睨んでいた。

「…」

そういえば朝、亀井と会ったんだった。

すっかり忘れていたが、俺はそのことを思い出す。

どうやらかなり根に持っているようだ。俺のことをずっと睨んでいる。そんなに俺が憎いのか。



午前の授業が終わり、昼休みが始まる。

俺は陽介のほうへ行こうとすると、

「おい」

と、後ろから誰かに呼びかけられる。

「亀井…何か用か?」

「…ちょっと一緒に来いや」

「はぁ?なんで…」

「いいから…さっさと来い」

命令口調でそう言われる。少し腹立つが、従うことにした。



俺は亀井に連れられて中庭に来た。

「…で、こんなとこまで連れてきて、一体なんの用だ?」

「…」

「…?おーい、亀井くーん?」

「単刀直入に聞く」

亀井が急に真剣な顔つきになる。

「お前…神崎じゃないだろ」

……

「いや…正確には、神崎の中にいるあんた。

お前は誰だ…?」

……どうやらこの男、気づいたらしい。

だが何故?どうやって気づいた?

「…なぜそんな事が言える?」

「知ってんだよぉ…俺はさ」

「この世界が、ゲームの中だってな」

…ふーん、そういうこと。

「俺の知ってるシナリオ通りに動かない…

あんたは一体誰だ?なんで邪魔すんだ?」

「…」

「そっか…あんたも俺と同じなんだな」

「あ?」

「あんたもそうだったんだな、亀井」

「…」

バレてるなら、もう話してもいいだろう。

「あんたの言う通り、俺は神崎じゃない。

至って普通のどこにでもいる会社員さ」

「…」

亀井が黙る。求めていた答えでは無かったのだろうか。

「…で、そんなあんたはどうして俺の邪魔をする」

「そんなの、あいつらが酷い目に会わないようにするために決まってるだろ」

「はぁ?酷い目に会わないようにだって?

笑わせる…あいつらは所詮ゲームのキャラクターだろ?

NPCなんだろ?そんなやつら、好きにしたって誰も文句言わねぇだろうが!」

こいつ、性根が腐ってやがる。

こんなんだから亀井の体にでも入れられたんじゃないか?

「ふざけてるのはそっちだ。

あいつらは生きてる、自分の意思で。

決められたプログラム通りじゃなく、自分の意思でだ」

「分かるか?ここはもうゲームの世界じゃないんだよ。

ここはもう現実だ、俺たちの生きる世界だ」

「…何を訳の分からねぇことを」

「分からないか?ここは、俺とあんたのいた前世と、

なんら変わりないんだよ」

「俺とあんたは、ただ姿が変わっただけなんだ」

「…ふざけんじゃねぇ」

…亀井の様子がおかしい、今にも爆発しそうだ。

「ふざけんじゃねぇぞ!俺は…俺は亀井刀牙だ!この世界の主人公なんだ!主人公は何したって構わないんだよ!

脇役のくせに…偉そうなこと語ってんじゃねぇぞ!」

「…前世で何があったかは知らんが、

陽介たちに手は出すんじゃねぇ」

「俺はこの生活に満足してるんだ。それを邪魔するなら容赦はせんぞ」

「…いつか後悔させてやるぞ、俺のシナリオを壊したこと」

「…言ってろ」

…亀井との話が終わった。

まさかやつも転生者だとは思わなかったが…

特に問題はないだろうし、早く陽介の所に戻るとしよう。



「…あ、勇也。どこ行ってたの?」

「まぁ、ちょっと、用事が」

「ふーん…あ、そうだ!聞いて!」

「ん?どうした?」

「僕、真緒さんと友達になれたんだよ!」

「おぉ、やるじゃない」

陽介が嬉しそうに俺に話す。

見たかったな…その現場。まぁでも、俺の望む結果に進んでくれているようで安心した。

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