第2話

さて、まずはどうしようか。

目的は決めたけど何から始めるかは全く決めていない。

「とりあえず学校、行ってみるか…」

日付を見てみる。4月1日…4月1日!?

「あ、まだ始まってなかったのか」

驚いたが別に問題は無い。ささっと準備して学校へ向かう。

「何年ぶりかなぁ、学校に通うの」

転生前は立派な社会人だった。

仕事も出来てたし友達だっていた。

でも彼女はいなかった…おいそこ、笑うとこだぞ。

割と満足した生活だったが、やはり学生時代と比べると

どうしても見劣りしてしまう。

だが、こうして俺は神崎勇也としてだが、もう一度学校へ

通うことが出来ている。そこは感謝してるよ、神様。

なんて事を考えていると前方に人が見える。あれは…

「おーい、陽介」

幼なじみの新田陽介だ。

控えめな性格ではあるが、良いやつだ。

「おはよう、勇也。今日から高校生だね、僕たち」

「そうだな。楽しみか?陽介」

「もちろん、勇也はどうなんだい?」

「そりゃもちろん俺も楽しみだ」

「同じクラスになれるといいね、僕たち」

「あぁ、そうだといいな」

なんて何気ない会話をしながら、俺たちは高校に着いた。

俺はここで、新たな物語を作るんだ。

陽介が悲しまなくていいような、そんな物語を。



入学式が終わり、俺たちは教室へ向かった。

クラス発表で俺と陽介は運良く同じクラスになれた。

やったぜ、俺が心の中でガッツポーズをしていると、

「あ、勇也!」

「おぉ、陽介か。どうした?」

「僕たち、同じクラスだよ!良かったね!」

「おう陽介!俺も嬉しいぜ!なぁ陽介!」

「…なんて?」

つい変なことを口走ってしまった。マジで何言ってんだ。

「すまん、嬉しくて舞い上がったら変なこと言っちゃった」

「はははっ、勇也ってばもう」

「ガハハ」

そんなこんなでクラスに着いた俺はすっかり忘れていた

存在に気づく。やつだ、やつも同じクラスだったのか。

亀井刀牙。

ゲームで神崎と亀井は高校で知り合ったらしく、それまでは

面識がなかったらしい。

神崎は亀井から溢れる悪のオーラに惹かれて友達となったらしいが…俺にはそんなものに興味は無い。

こいつ本性やばいしな。こいつの本性は…まぁまた今度話そう。要するに、俺はこいつとは関わらない、そうすることにした。恐らくそれが最善策だろう。

あのゲームでは神崎が原因で悲劇が起こることが多かったからな。そのせいで亀井が暴れ回っていたんだが。

そしてもう一人の重要人物もどうやら同じクラスだったらしい。

川瀬真緒(かわせまお)。このゲームのヒロインで、陽介の彼女になる女性であり、後に亀井に盗られる女性で、

容姿端麗、成績優秀、運動神経抜群、と言ったテンプレ要素を兼ね備えた、よくいる美少女だ。

陽介はそんな彼女に惚れ、思い切って告白したらまさかのOKが貰えるという、まぁなんともうらやま…素敵な関係になれたのだが、どうやら亀井と神崎はそれが気に入らなかったようだ。おい神崎、お前幼なじみだろうが…

まぁそんな理由で陽介は川瀬を寝取られるんだが、まぁその後の展開が非常に残酷で、どれも思い出したくないものばかりだ。詳細はいつか話すが、俺はそんなものは見たくないので、全力で陽介の恋をサポートしようと思う。



ホームルームが始まり、自己紹介の時間になった。

ついでに亀井の紹介もしておこう。

亀井刀牙…まるで絵に書いたような悪で、タバコ、飲酒、素行不良、とこちらも悪のテンプレを兼ね備えたやつだが、

こいつは昔からずっと悪だったようで、こいつの悪い噂は

死ぬほどある。何故か神崎はそんな亀井に惹かれたようで、

自己紹介が終わったあと、すぐに友達になろうと決心したそうだ。アホかこいつ。

もちろん俺はそんなやつは嫌いなんで友達なんてならないんですけどね。



自己紹介も終わり、休み時間となった。

次の時間もホームルームだが、トイレに行きたくなったので俺は風の如くトイレへ向かった。



「…は?」

その後ろで疑問の声を上げるやつがいたのだが、

俺はそいつを知る余地などなかった。



ホームルームが終わり、下校時間となった。

ここで最初の悲劇が訪れる。神崎の裏切りだ。

ゲームでも最初こそは神崎は陽介と仲が良さそうにしていた。しかし、神崎は速攻で陽介から亀井へと鞍替えしたのだ。ここが第一の神崎許せんポイントだ。

なんと神崎は亀井に陽介をパシリにしようと提案した。

そして亀井はそれを承諾する。で、この後陽介は二人に絡まれるのだが、俺と亀井はまだお互い何も知らない。

つまり陽介をパシリにしようとする考えもないのだ。

俺は陽介を連れてすぐに帰ることにした。しかし、

「ごめん勇也、ちょっと待っててくれる?

クラスの皆に挨拶しときたいんだ。」

なんていい子…!

「それはいい考えだな、俺もいっしょに行くわ」

「うん、分かった」

俺と陽介は一人ずつ皆に挨拶していった。

返ってきた反応は悪くなく皆普通に挨拶を返してくれた。

しかし、亀井だけは違った反応だった。

何故か陽介の挨拶を無視する。

「あの…僕の名前は新田陽介って言うんだけどさ」

「…」

「あ、あの、亀井くん、だよね」

「…チッ」

ガタッと、豪快な音を立てて亀井は教室を出ていく。

なんだあいつ、ムカつく野郎だな。

「ひでぇ反応だな、大丈夫か?陽介」

「…大丈夫だよ、勇也。きっと彼は緊張してるんだよ」

「陽介…」

「さ、帰ろう!勇也!

今日はゼ○ブレイドの発売日だったでしょ!急ごうよ!」

「あっ!そうだったな!

そうと決まれば、いざレッツゴーだぜ、陽介!」

俺はさっきの事を忘れて、ガオというゲーム売場へ向かった。




「…」

「クソッ、どういうことだ」

「なんでだ、なんで神崎はあんなクソガキと仲良くしてるんだ」

「なんでシナリオ通り、俺に話しかけてこねぇんだよっ!」

「クソがっ…イライラしやがる」

勇也はまだ、自身に降りかかる災いに気づいていなかった。


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