【一話完結】5分で読める童話
ののの
少女と魔法の糸
少女と魔法の糸
アリスは魔法の糸を使って人形を作ることができる少女だった。
彼女は孤児院で育ったが、他の子供たちと仲良くなれなかった。彼女は自分の部屋にこもって、魔法の糸で作った人形たちと遊んでいた。
彼女は人形たちに名前をつけて、自分の家族や友達だと思っていたのだった。
ある日。
孤児院の園長がアリスの部屋にやってきた。
園長は、アリスが魔法の糸を使っていることを知っていたのだ。
園長は魔法の糸を酷く欲しがっていた。
魔法の糸はとても貴重なもので、高く売れるという噂があったからだ。
園長はアリスに、魔法の糸を渡すように命じた。アリスは拒否した。魔法の糸は、彼女の大切なものだった。園長は怒って、アリスを殴った。アリスは泣いた。
しかし、魔法の糸は出さなかった。
そのとき、不思議な事が起こった。
アリスの部屋の窓が割れたのだ。
窓から、一匹の黒い猫が飛び込んできた。猫はアリスのそばに駆け寄り、園長に威嚇した。園長は驚いて、後ずさった。猫はアリスに向かって、人間の言葉で話した。
「私の名前は『レオ』。私はあなたを助けたい。さあ、一緒に逃げよう」
アリスは猫が話したことに驚いたが、猫の目を見たとき、何故か信じることができた。
アリスは魔法の糸と人形たちを抱えて、猫についていった。猫は窓から飛び出し、屋根の上を走っていった。アリスは猫に追いつこうと、一生懸命走るのだった。
暗い闇の中を必死に走ったレオとアリスは、街の外の、深い森の中にある小屋へとたどり着いた。
小屋はレオの住処だった。レオはアリスに、小屋の中に入るように促した。アリスは小屋の中に入った。
小屋の中は、暖かい雰囲気の家具でいっぱいだった。レオはアリスに、小屋の中で自由にくつろいでいいと言った。アリスは小屋の中を見回した。小屋には、本や地図や道具などがたくさんあった。
アリスは側にあったソファに深く座り込むと、ふぅ、と一息吐いた。
それから暫くして、レオはアリスに、自分のことを話し始めた。
「私は、魔法の猫だ」
そう語り出したレオの言葉を、アリスは何も言わずただ黙って続きを待った。
「人間の言葉を話したり、人間の姿に変身したりできる。私は、魔法の世界から来た。魔法の世界は、人間の世界とは別の次元にある。魔法の世界では、魔法が普通に使われている。魔法の糸も、魔法の世界の産物だ」
「魔法の世界から、どうしてここに来たの?」アリスが尋ねた。
「私は魔法の世界で王子として生きていた。だけど私にとって、それは窮屈だった。辛く退屈な世界だった。
私は、自由に冒険がしたかった。外の世界を知りたかった。だから、魔法の扉を使って、この世界へとやってきた。
魔法の扉は、魔法の世界と別の世界をつなぐ。そしてその扉は、鍵が無ければ開けられない」
「"魔法の扉の鍵"って、どんなものなの?」
アリスが興味深そうに聞いた。
「"魔法の扉の鍵"は、この指輪だ」
とレオは自分の指にはめていた金色の指輪を見せた。
「この指輪は、父からもらったものだ。この指輪を使えば、どこでも魔法の扉を開けることができる」
「すごい……」
アリスは感嘆した。
そこでレオは、「でも」、と付け加える。
「この指輪には危険もある。この指輪を狙っている者がいるんだ。
私の兄だ。兄は、魔法の世界の王位を継いだ。でも、彼は権力に溺れて、魔法の世界を支配し、それどころか兄は、"魔法の扉の鍵"を手に入れれば別の世界も征服できると考えているんだ」
「それは大変だね」とアリスは同情した。
「私は魔法は支配の道具なんかに使うべきじゃないと思うんだ。もっと自由で楽しいことに使うべきなんだ」
レオはそれから、アリスの方を向き。
「だから、私は君に会ったとき、助けてあげたかった。君は、魔法の糸を使っていることがバレて、危険にさらされていた。私は、そんな君を守ってあげたかった」
「ありがとう」とアリスはレオに感謝した。
「どういたしまして」とレオは笑った。
「でも、君はどうして魔法の糸を持っているんだ?魔法の糸は、魔法の世界のものだ」
「私も、魔法の糸を持っていることがずっと不思議だった。私は、魔法の糸をどこで手に入れたのか覚えていないの。物心ついた頃にはもうずっと魔法の糸があったから」
「それは不思議だね。もしかしたら、君にも魔法の世界との関係があるのかもしれない」
「私にも?」
「そうだよ。君は、魔法の糸を使って人形を作ることができる。それは、普通の人間にはできないことだ。君は、特別な人間なのかもしれない」
「特別な人間?」
「うん。私は、君に興味がある。君と一緒にいたい」
「私も、あなたと一緒にいたい」とアリスはレオの目を見つめた。
二人は、互いに惹かれ合っていた。二人は、小屋の中で抱き合って寝た。二人は、初めての恋に落ちた。
そうして、暖かい夜は満ちていった。
静かな森の中で、その小屋は、幸せなひと時に溢れていたのだった。
それからというもの、レオとアリスは小屋で幸せな時間を過ごした。
二人は、お互いのことをもっと知りたくて、たくさんの話をした。
レオは、魔法の世界のことや、自分の冒険のことをアリスに教えた。アリスは、自分の過去のことや、魔法の糸で作った人形たちのことをレオに話した。
二人は、魔法の糸で作った人形たちと一緒に遊んだ。二人は、小屋の周りの森で散歩した。二人は、小屋の中で愛し合った。
アリスとレオ。
二人は、互いにこのままずっと一緒にいたいと思った。この安穏とした平和をただ願った。
でも、二人の平和な日々は長くは続かなかった。
レオの兄が、二人の居場所を突き止めたのだ。
レオの兄は、セロという名前だった。
セロは、魔法の世界の王だった。
セロは魔法の力を使って、魔法の世界の人々を支配していたのだった。
しかしそれだけでは満足せず、別の世界も征服しようとしていたセロは、"魔法の扉の鍵"を持っているレオを探していた。
セロは、レオを捕まえて、"魔法の扉の鍵"を奪おうとしていたのだ。
セロは魔法の世界から、自分の部下たちを連れてこの世界にやってきた。
レオの指輪の位置を感知することができたセロは、レオの指輪の位置を追って、レオとアリスがいる森にたどり着いた。
レオとアリスがいる小屋を見つけたセロは、自分の部下たちに、小屋を包囲するように命じた。
それから、自分の部下たちに、レオを生け捕りにするように言い、アリスは殺すように命じた。
アリスとレオは、小屋の中で眠っていた。
しかし、不穏な気配を感じたレオは、夢からすぐに目覚める。
そして、小屋の外にセロの部下たちの気配を感じたレオは、アリスを起こした。
レオは、アリスに、危険だと言った。
レオは、アリスに、小屋から逃げるように言った。
それから自分の指輪を渡した。
「こんな大事なもの、受け取れないよ」
「君にだから託すんだ。さあ、行って、この世界を守るんだ」
レオは、アリスに、魔法の扉を開けて、魔法の世界に行くように言った。レオは、アリスに、自分は後から行くと言った。
アリスは、レオの言うことを聞いた。アリスは、レオの指輪をはめ、魔法の糸と人形たちを抱え、小屋の裏口から出た。アリスは、森の中で魔法の扉を開けた。アリスは、魔法の扉の中に入った。
レオは、アリスが魔法の扉の中に入るのを見た。
「よかった……」
レオは、アリスに、愛していると言った。
レオは、アリスに、また会おうと言った。
レオは、アリスに、……。
レオは、小屋の正面から出て、セロの部下たちと戦った。
そして魔法の世界の王であり、兄である、セロと対峙した。レオは、セロに、自分の指輪はもうないと言った。
「そんな馬鹿な事が…」
「"魔法の扉の鍵"はもう今頃、魔法の世界だ。残念だったな。
……おそらく、レプリカの銀色の鍵を使ったのだろうが、それももう壊れた筈だ」
セロは、レオの言葉に怒った。自分の指輪を返せと言った。自分の指輪を返さなければ殺すと言った。セロは、レオに、自分の指輪を返すように脅した。
レオは、セロの言葉に笑った。
自分の指輪はもう手放したのだ。自分の指輪はアリスと一緒に幸せになるのだ。
激怒したセロは、レオに向けて、自分の魔法を放った。セロは、レオを自分の魔法で傷つけた。セロはレオを自分の魔法で殺した。
レオは、セロの魔法に倒れた。レオは、セロの魔法に苦しんだ。レオは、セロの魔法で、……。
死の間際、レオは、アリスの顔を思い出した。
レオは、アリスの名前を呼んだ。
瞼の裏でレオは、アリスの笑顔を見た。
少しだけ、申し訳ない、と思った。
最後に、レオは、彼女の幸せを願った。
意識が途切れる寸前、目の前に、一筋の糸が光ったかの様に見えた。
それはとても美しく、まさに魔法の糸だった。
アリスと出会えてレオは、幸せだった。
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