第17話 4月の受診

 2月の受診で、鎮痛剤がカロナールからトアラセットに変わり、最初の1週間は副作用の吐き気に苦しめられた。


 ちなみに、痛みを10段階で表現すると、カロナールの頃は2〜5ぐらいだったのが、2〜4ぐらいになった感じ。


 うっかり薬を飲み忘れると痛みが強くなるので、確実に効いているのだと思う。


 ただ、圧迫感が消えるわけではないので、食後の苦しさや常に何かが詰まっているような感じ、動いたときの痛みや身体の中でゴリュっとした違和感は変わらない。


 さらに、長く座っていても辛いし、立っているのもシンドい。


 2月から体重の数値が変化していないので、現状を維持できるエネルギーは摂れているのだと思う。


 そんなこんなで、快適な日常が送れているとは言い難く、帰宅後の創作活動も満足に行えないまま時間は過ぎ、私は今とても焦っている。


 そろそろ7月のワンフェスの版権申請用の作品仕上げなきゃならない&5月のデザインフェスタ用の作品も終わらせないとならない。

 GWはゆっくり好きなこと……していられない。



 さて、二ヶ月ぶりの受診だ。

 採血の予約時間に行っても30分は待つ。その後結果が出るまで一時間近くかかる。そして時間ぴったりに診察に呼ばれるとは限らない。そのため今回は本や途中やりの試作品など、暇つぶしの品を用意して行った。


 今日の採血待ち時間は20分程度だった。前回よりサクサク進む。

 渡されたファイルを内科の受付に提出したら、一応時間の11時まで院内のタリーズで朝ごはん&読書。


 今朝は大好きなハニーミルクラテと、サンドイッチを半分。(残り半分は出社後に食べた)


 11時に内科の待合室に戻り、そこで黙々と円織りのサンプル作り。

 なんだかんだと1時間以上待って診察室へ。


「痛みはどう?」

「カロナールより効いていると思いますが、痛みが無くなったわけではないです。少しマシになった程度」

「吐き気はどう?」

「最初の一週間を乗り越えたら、楽になりました。今は平気です」


 痛みは朝より昼から夜、だんだん辛く苦しくなること、圧迫感の事などを話す。


「背中からこう……肋から鳩尾にぐっと……痛みと詰まった感じが……」

「うーん。腎臓の薬で痛みが楽なったっていう人もいるけど、その圧迫感は腎臓じゃないからなぁ」

「肝臓、ですよねぇ……」


 モニターに血液検査の結果が表示され、N先生は前回と比較する。


「コレステロール、肝臓の数値はOK。腎臓も前回と変わらない。貧血もない……アセトアミノフェン、まだ大丈夫だから増やそっか」


 ということで、昼と夜にカロナール追加。


痛みは薬でコントロールするしかない。


 今はコントロールできる最適な量や薬の種類を探っているという感じ。

 多分、それでも痛みはゼロにはならない。結局どこまで私が許容できるかということだろう。


「これで様子を見て。今度は7月に」


 そう、できるのは痛みを少しでも楽にすることだけ。

 場所的に苦しいのはなんともできない。 嚢胞は勝手に小さくはならない。数が多すぎてどうしようもない。


 N先生は申し訳なさそうに「何もできなくて、ごめんねぇ」と言う。


 私は「仕方ないですよねぇ」と苦笑して返す。


 トアラセットの副作用でやや便秘気味でもあったので、ついでにそれ用の薬も出してもらい、次回の予約を入れて診察終了。



身体の痛みと苦しみは、ジワリジワリと生きる気力を削いでいく。


 病院にいっても、この状態を改善する方法――治療法・根治療法がない。


ただちに命を脅かす病気。緊急性がある病気ではない。全体の患者数からみたら、私の症状など軽い方なのかもしれない。


 美味しそうな食べ物を見ても、旅行プランの食事の写真を見ても、量が食べられないことと、食後の苦しさが手を止める。

外食で食べきれなくて残すと、相方が「もったいない」といって食べてしまう。それはそれで食べ過ぎになるので彼の身体によろしくないし、それが申し訳なくて地味にストレス。


苦しくて日常を楽しめない。

楽しくないのに生きているってなんだろう。

ただ、日々のタスクをこなすだけ?


 元々生きる事をやや諦めている身からすると、こんな状態でずっと生きていくのって、シンドいなって思う。

 病苦で自死を選ぶ人がいるけど、今はその気持がわかる。

 たぶん、なんの柵もなければ、もしくは私の中の何かが決壊したら、おそらく私は飛ぶだろう。


身体的な痛みと苦しさも、人を崖の淵へと追い立てる。

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