第40話.街からの脱出②

 マリベルはローブを広げると、それに袖を通した。

 その瞬間、マリベルの気配が薄れる。

 そこにマリベルがいるのは分かっているのに、まるで気配を感じない。目を放したら、そばにいるティトでも見失ってしまうかもしれない。


「うわっ、すごい効果ですね。目の前にいるのに見失いそうになりました」

「そうなの?」

「はい。しかし、これはちょっとやばいですね。マリベル、ごめんなさい。魔法の効果が強過ぎて見失ってしまいます。すみませんが、手を繋いでいて貰えますか?」

「うん」


 ティトの差し出した手をマリベルは握り返した。

 そうすることで、やっとティトは、はっきりとマリベルを認識することが出来た。繋いだ手を見つめながら頬を染めているマリベル。

 それを見てティトも顔が熱くなるのを感じた。


「すごいんだね。これ」


 恥ずかしさをごまかすようにマリベルは少しだけ早口になる。


「はい。思っていたよりも強力な魔法道具でした。まさか目の前にいても見失いそうになるなんて……。これは、他人からは見えていないと思ったほうが良さそうですね。歩くときに気を付けてください。油断すると、誰かが気付かずにぶつかってくるかもしれません」


 ティトのほうも恥ずかしいのか、マリベル同様に、つい早口になってしまう。

 

「うん。気を付けるね」


 手を繋いだままティトを見上げるマリベル。古ぼけたローブを着てフードを被っているが、ティトにはそんなマリベルも可愛らしく見えてしまう。

 こんな時だと言うのに、ついドキドキしてしまう自分に困惑した。


「では、行きましょうか?」


 ティトはその困惑を振り切るようにそう言うと再び北門を目指す。今度は、走らずにゆっくりと歩く。


 北門までは、もう歩いても10分ほどだ。

 歩きながら通信用魔法道具でルイスに現状を伝えた。既にルイスは北門のそばで待機しているらしい。




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 🔸隠者のローブ 思ったよりもすごい

  効果でした。

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