第32話.マリベルの買い物④
それからしばらく二人で並んで歩いていると、中央通りが見えてきた。
多くの街がそうであるように、この街も中央を走る目抜き通りには、大きな店が集まり人々で賑わっている。
「さて、もうすぐ中央通りですね。何から見ますか?」
「……えと、下着、からかな」
マリベルが、頬を染めながら俯き加減に、かろうじてティトが聞き取れるほどの小さな声で呟いた。それを聞いたティトは、同じく真っ赤になりながら、しばらく黙ってしまう。
気まずい空気が流れる中、それでも二人は足を止めない。
やがて一軒の肌着屋の前まで来ると、ティトは懐から銀貨を何枚か取り出して、マリベルに渡す。
「あの……僕は、外で待っていますので」
「うん」
それだけを言うので精一杯だった。できるだけお店のほうを見ないようにしているティトに、マリベルは俯きながら小さく頷くと、店に入っていった。
帽子とスカートで
いつどこで、奴らに補足されるか分からない。
護衛を気取っているティトとしては、あまり離れるわけにはいかなかった。それに、ルイスに任されたのだ。間違ってもマリベルを危険にさらすわけにはいかない。
ここに来るまでにも2回ほどティトは、イザベラの配下のものと思われる騎士の姿を見かけた。おそらく、マリベルを探しているのだろう。
だから、ティトは店の中にいるマリベルにちらちらと視線を送る。
窓の向こうには、下着を選ぶマリベル。
そのせいで、マリベルが手にとった下着を見てしまいティトは一人でどぎまぎしてしまう。さらに覗いているようなシチュエーションが、ティトの背徳感に拍車をかけていた。
永遠とも思える時間の後、やっとマリベルが紙袋を持って戻って来た。
「お待たせ。ティト」
「おかえり、マリベル。ちゃんと買えましたか?」
「うん。でも、ティト。ずっと外から、私のこと覗いてたでしょ?」
上目遣いで恥ずかしそうにティトを見上げる。
「あ、いえ、違くて。いや違わないか。その、僕はマリベルを護衛しなきゃで……。の、覗くつもりはなかったんです。ごめんなさい」
慌ててしどろもどろになりながら言い訳するティト。
「ぷっ。あははははは。うん、守ってくれてたんだよね。あははははは。ごめん。ティト、分かってるよ」
楽しそうに笑うマリベルを見て、ようやく
それでも、ころころと笑うマリベルの姿が眩しくて、ティトは照れたような笑いを浮かべていた。
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🔸マリベルに詰め寄られてタジタジに
なっているティト。かわいい?
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