第24話.ルイスの変装④

 廃屋はいおくへと入ったルイスは、騎士をその場に転がすと、着ている騎士服とよろいを脱がし始めた。


 寝ている人間の服を脱がすのは、なかなかに難しい。ルイスは、苦戦しつつもなんとか鎧と騎士服を脱がす。


 鎧は、ハーフプレートと呼ばれるもので、上半身と肩を覆うものだ。それに腕の一部を覆う手甲てこうがセットになっている。


 騎士服は、白地に赤をあしらったもので、昨日バルドゥルが着ていたものと同じだ。赤薔薇の騎士団ローテローゼリッターは、全員がお揃いの服と鎧を着ている。


 騎士服にハーフプレート、そしてマントまでが赤薔薇の騎士団ローテローゼリッター正装せいそうらしい。

 マントは白地の中央に赤い薔薇の刺繍がほどこされている。



 服まで脱がし終えたルイスは、懐から一つの仮面を取りだした。

 目元から鼻の上までを覆う銀の仮面で、仮面舞踏会などで男性が身に着けているものと似ている。

 艶の無い銀色の金属で出来ていて、派手な装飾が彫り込まれていた。


 その仮面を騎士の顔にあてる。

 すると、仮面は強い光を放った。その光は、騎士の顔を覆うように広がっていき、顔全体を覆うと、急速に光が弱まり、元の銀仮面ぎんかめんに戻る。



 今度は、それを自分の顔につける。

 先ほどと同じように、仮面が強い光を放つ。

 その光はルイスの顔全体を覆うと、先ほどと同じように急速に光が弱まった。だが、銀仮面には戻らない。

 光が消えたルイスの顔は、騎士とまったく同じになっていた。


 この仮面、千の顔を持つ者サウザンドフェイスという名の魔法道具で、一度つければその者のをコピーすることが出来る。


 この機能により、外見は完璧にその人物になりすますことが出来るのだ。また、顔だけでなく声もコピーされるので、声でバレることも無い。



 顔を変えたルイスは、騎士服と鎧を着込み、最後に白いマントをつけた。どこからどうみても、先ほどルイスを追ってきた騎士にしか見えない。


 最後に、騎士から剣も取り上げ腰に吊るす。


「まあ、こんなもんだろう」


 ルイスは小さな手鏡で自分の姿を確認し、騎士の声でそう言うと、眠っている騎士を床に転がしたまま、廃屋を後にした。




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🔸千の顔を持つ者サウザンドフェイス、欲しい!

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