第23話.ルイスの変装③

「……もう逃げられんぞ」


 騎士は肩で息をしながら、袋小路の先にいるルイスを睨みつける。それとは対照的に、ほとんど息を乱していないルイスは、口の端をあげてニヤリと笑った。


「逃げるつもりはないさ」


 そう言って、投擲用のナイフを手にとると、騎士に向かって一瞬で距離を詰めた。騎士は驚いて、剣を抜くのも間に合わない。

 そんな騎士の右手をナイフで浅く切った。


「くっ」


 騎士はうめきながらも、なんとか剣を抜いた。

 痛みはあるが、戦うのに支障は無さそうだ。


 ルイスは騎士から距離を取ると、片手でナイフを構えて騎士を睨む。その立ち姿に隙は無かった。


 騎士のほうは、そんなルイスを警戒して動けない。


「あの娘はどこにやった?」

「さあ、知らねぇな」


 騎士は精一杯の虚勢を張って怒鳴った。そんな騎士にルイスはうそぶく。騎士は怒りの形相でルイスに詰め寄ろうとするが、一歩踏み出したところでバランスを崩した。

 そのまま踏ん張りも効かずに、その場で倒れる。


「なっ、何をした?」


 ここに来て、体の異変に気付いた騎士は驚愕の表情を浮かべる。


「麻痺毒だよ。安心しろ、しばらく動けないだけで死んだりはしない」


 そう言いながら騎士に近づくと、小瓶を取りだして騎士の鼻先に霧吹きの要領でプシュっと吹きかける。

 ティトが創った魔法道具、『ファンガスの眠り粉』。少量でも吸い込めば、数秒で深い眠りに落ちる。


「これも、死にはしないよ」


 ルイスが言い終わるのとほぼ同時に、騎士は眠りに落ちていた。ルイスは念のため、追加でファンガスの眠り粉を吹きかける。


 完全に眠ったのを確認したルイスは、騎士を引きずって近くにある廃屋はいおくへと入っていった。




──────────────────

🔸騎士を捕まえたルイス。この後どうする?

──────────────────

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る