第11話 脱走猫
「お〜い、猫くん。何処かな?」
僕は高級感溢れる社長室で、猫を探している。何でも社長が飼っている猫が脱走したらしい。その連絡を受け、何故か僕が猫探しに選出された。
先輩や課長達には、彼らにしか出来ない仕事がある。新人の僕が選ばれたのは、当然のことだろう。因みに社長は猫が居ないことにショックを受け、救護室で寝込んでいるそうだ。
「こういうのは分からないな……」
部屋を見渡していると、白い椅子が描かれた絵画に目が留まり首を傾げた。社長室に置かれている調度品はどれも、高価だと思われる品である。壁に掛けられた絵もそれに該当すると思われるが、美術品への造詣が深くない僕には理解することが出来ないのだ。
「にゃあ」
「あ! 居た! 猫くん、探したよ!」
足元から鳴き声聞こえ、下を向くと黒い猫が僕を見上げていた。しゃがむと黒猫の頭を撫でる。何処に隠れていたのかは分からないが、無事に見つけることが出来て良かった。
「んにゃ」
「ふふ、可愛いね。あ、先輩に報告しないと!」
人見知りしない性格なのか、翡翠色の瞳を細めると僕の手に擦り寄る。滑らかで手触りの良い毛並みをもう少し堪能したいが、社長が倒れるほどに心配をしているのだ。名残惜しいが連絡を入れる為に立ち上がり、スマホを手にした。
「……あれ? 猫くん?」
先輩への報告が終わり足元を見ると黒猫の姿はなく。代わりに先程の絵画の白い椅子に、黒猫が一匹座っていた。
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