第8話 吸糖室
「聖川、土産で貰った果物は何処に置いた?」
取引先の客人を見送り廊下を歩いていると、先を行く国枝先輩が振り返った。仕事が一段落し、そろそろ午後の休憩時間である。甘味が好きな先輩は、先方から頂いたフルーツの詰め合わせが気になるようだ。
「給湯室に置きました」
「……マジか……」
僕は教えられた通りの場所に置いたことを伝えると、先輩は右手で顔を覆った。その声は掠れ、疲労感が滲み出ている。
「間に合え」
「え? 先輩?」
先輩は突然走り出し、何事か分からないまま僕も後を追いかける。余計なことをしてしまったのだろうか。
「遅かったか……やられた」
「あれ? 萎んでいる?」
給湯室に駆け込むと、お土産は僕が置いたままテーブルの上に置かれていた。しかし不思議なことに、フルーツの詰め合わせは皮だけを残し萎んでいる。空調が合わなかったのだろうか、フィルムのラッピング包装がされているのに不思議だ。
「聖川、此処に甘味は厳禁だ」
「? はい……」
そういえば、お土産を此処に置くように教えたのは誰だっただろう。
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