女の子の内緒話

「はあ……はあ……すぅー……」


琥珀はトイレの個室に閉じこもって、心の整理をしていた。


「なんで元就くんはあんなことを……」


「それは君がかわいいからじゃないかな」


「冗談言わないで!」


琥珀は、茶々を入れるウサギを諫める。


「まったく。心落ち着けて一人にすらなれやしない」


琥珀は自らのさらさらで長い髪とつるつるの肌を確かめる。


二人の男が自分を取り合っている。


それは自分が男子たちにとって魅力的な美少女であることを示していた。


「僕は……私は……」


しばらくして、気持ちを落ち着かせた琥珀は個室を出て、洗面所の鏡の前に立った。


鏡に映るはずの自分の姿はかつての成人男性のそれではなく、紛れもない少女の顔だった。


彼女は鏡に映る自分をじっと見つめた。


「琥珀ちゃん頑張ってね」


と声をかけるのは天音だった。


「ひぃっ。びっくりした」


琥珀は小動物のようにペット用ミニうさぎのように肩をびくつかせた。


「ごめんごめん。それにしても、琥珀ちゃんがあんなにモテてるなんてねえ。まあ、かわいいけどさ」


「簡単に言わないでよ。こっちは大変なんだからね!」


「ふふっ。元就くんのことはどう思っているわけ?」


「ただの友達だよ。秘密の関係なんてないし!元就くんの女になった覚えなんてないよ」


「ふうん。そうなんだ?嘘じゃなさそうだね」


「だよ!」


「だったら、元就くんはなんであんなこと言ったんだろう」


「さ、さあ」


琥珀は心当たりはあるがとぼけてみせる。


「佐藤くんこそ、本当に琥珀ちゃんのこと好きだよね。一目ぼれしてる。元就くんのは、きっと、それに対する対抗心だよ」


図星☆


琥珀が薄々勘づいていることを言い当てられる。


リアル女子怖いと琥珀は少し思った。


「佐藤くんのことはどう思ってるの?素直に自己紹介かっこいいって思ってる子もいれば、ちょっとオタクっぽくてダサいって思ってる子まで幅広くいるけど」


「すごい情報収集能力だね。はぁ……」


女の子っぽい甲高い溜息をしてしまった自分自身に琥珀は少しドキリとしながら答えた。


「佐藤くんは、ちょっと、ガツガツしていて怖いかも……。男子にあんなに露骨に迫られるなんて経験したことないし」


だって、僕は男だからという続きの言葉を琥珀は飲み込む。


「と、言っても握手迫られただけで、好きって面と言われたわけじゃないでしょ?自意識過剰じゃない?」


「だって……だって……」


手がむしむししていて、股間が膨らんでた……とは恥ずかしくて琥珀は言えなかった。

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