学級裁判
1日5回。
ひとりひとり聞いていったら5人に回数オーバー。
しかも、1人に2回も3回も心を読むことがあるかもしれない。
ある程度犯人候補を絞るしかないと元就は思った。
「いつ頃、なくなったかわかる?朝は給食費あった?」
北村くんははっと我に返ったかのように言った。
「体育の時間、体育の時間まではあった」
「着替えのときに盗んだか、あるいは、体育の授業中か」
「山下くん、河合さん、福田さん、喜多くん」
いきなり名前を読み上げる声がしたかと思ったら、横には琥珀がいた。
「体育の時間にトイレに行ったのがその4人で全部だよ」
「お前よく覚えてるな」
「職員室で先生のメモを後で見たら同じ名前が書いてあるはず」
琥珀は、もちろん検索演神ウサモフを使ってメモをのぞき見たのだった。
もし、子どもが給食費を盗んだ犯人だとしたら、大人と違ってドキュメント化されるような証拠は残すことはないことだろう。
検索演神の使い道もピンポイントに絞られていた。
「虎尾さんひどい。私を犯人と疑ってるのね。さっき庇ってあげたのに」
河合さんだった。
琥珀は焦った。
ここで探偵ごっこをして真犯人を当てたとして、子どもたちの心に深傷が残らないか。
自分のしていることは果たして正しいのか。
まともな大人を介在しない学級裁判はろくな結果がでない。
そんな琥珀の心配をよそに元就は強気に出た。
「4人とも、いや、俺も含めて5人ともランドセルを調べよう。それで無実を証明できたらいいだろ?みんな調べてくれ」
「いーやですー。自分だけ勝手に調べてれば?」
拒否反応を示したのは河合さんだった。
元就は霧霧に働き掛け、河合さんの心を読むことにした。
元女子なだけあって女子の心を読むことには容赦なかった。
(やだ……。うんちマークの鉛筆持ってるのみんなに見られたら恥ずかしい。犯人じゃないのにどうしてこんな辱めを受けなきゃいけないの!)
なるほど、犯人ではないか。
消去法として犯人候補が一人消えた。
この調子で3人の心を読んでいけば……。
「河合さんはもういい。山下くん。ランドセルを見せてくれ」
「は?なんで河合だけいいんだよ!ずるいにもほどがあるだろ。だったら俺も見せない」
小学生の意地の張り合いになれば、目くそ鼻くその戦いになり収集がつかない。
推理ごっこは混沌へと向かっていく。
「待てよ?」
元就は冷静になった。
「あの子の心をまだ読んでいない」
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