無表情の美形王子に婚約解消され、自由の身になりました! なのに、なんで、近づいてくるんですか?
水無月 あん
本編
第1話 婚約解消
「婚約解消してくれ」
ピンク色の髪の女性が、婚約者の腕にぶらさがっている。
小さい子どもなら、かわいいだろうけれど、大人の女性がするとおもしろすぎる。
しかも、婚約者は彫刻のような美貌で無表情。
うん、笑ってしまいそう。
でも、我慢。
今、私、公爵令嬢アリス・ヴァルドは、婚約者である第二王子のルイス殿下に婚約解消を言い渡されたところだもの。
いくら嬉しくても、笑ったらダメ。
ちなみに、ルイス殿下は私より5歳年上で、御年20歳。
背が高く、輝く金髪に、恐ろしく整った美貌は無表情でつくりものみたい。
そして、美しい青い瞳は、今日も今日とて冷静な光を放っている。
到底、恋におぼれているようには見えない。
それにしても、この女性、よく、こんな怖い人にぶらさがっていられるわね。
ま、それだけ愛されている自信があるんでしょう。
だって、私を見る目が優越感に溢れている。
が、そんな目つきも、かわいく見えるほど、私としてはありがたい。
だって、王子妃なんて面倒すぎる。ずーっと嫌だった。
が、愛のためにというなら頑張れるのかもしれないが、あいにく、私はルイス殿下が苦手。
いつも無表情で、何を考えているのかわからないから。
おそらく、私に関心がないんだと思う。
初めて会ったのは、私が7歳の時。ルイス殿下が12歳だった。
お人形のような、美少年だったルイス殿下。
私は、ドキドキしながら、一生懸命に挨拶した。
なのに、無表情で返された言葉は、「ちびだな」。
挨拶をしたら、挨拶が返ってくると思っていた私。
まさか、悪口が返ってくるとは思わなくて、大泣きしてしまった。
もう会うことはないと思ったのに、まさかの婚約。
泣いて嫌がったけれど、王命で仕方ないと、私を溺愛しているお父様に散々謝られた。
それから月1回、お互いを知るためと、二人だけのお茶会に強制参加させられることになった。
8年続いたが、ルイス殿下のことは全くわからなかった。
なぜって、会話というものがほぼないから。
会うたびに言われるのは、「小さいな」だ。
どうやら、ルイス殿下にとって、私は背丈くらいしか目にとまるところがなかったんだと思う。
その後は、ほぼ無言。
たまに、用意されたお菓子を指で差して、「これ食べろ」と、命令する。
私は指さされたお菓子を、無言で食べる。お菓子がものすごく美味しいのは救いだけれど。
でも、修行のような、お茶会だったわね。
こんな状況で好きになれというのは、無理よね?
私としては、私を好きになってくれる人と結婚したい。
だから、ピンクさん、本当にありがとう!
「婚約解消、承りました。どうぞ、お二人でお幸せに」
と、微笑んで見せた私。
「ごめんねえ、アリスさん」
と、私の言葉に嬉しそうに笑うピンクさん。
逆に、ルイス殿下の青い瞳は冷たさを増したような気がした。
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