屋上から飛び降りようとしている美少女を助けただけなのに、何故かめっちゃ惚れられた話
よるくらげ。
第1話 自殺
退屈な授業が終わり、この後部活がある友達と少しだけ話してから屋上へ向かった。
特に理由は無い。
暇だったので景色でも見ようかなと思っただけなのだ。
誰かが行ったのを見たから追いかけたとかいう訳でもない。
本当にたまたま。
屋上に行ってみると、そこには、自殺しようとしているクラスメイトが一人。落下防止用の柵の向こう側に立っていた。
◇ ◇ ◇
「……え?」
俺は、無意識の内にそんな間抜けな声を漏らしてしまった。
でも、こんな所を目撃すれば、誰だって驚くだろう。
彼女はチラチラ地面の方を見ては、小さく身震いしてすぐに空を見上げる。
それをさっきから何度も繰り返している。
風も強いので、早くその場所から移動しないといつか落ちてしまうかもしれない。
早く助けないと。
「……
俺は何故か名前を呟いて、思わず駆け出したかと思えば、彼女の服を掴んでいた。
落ちないように、手にしっかりと力を込めて。
「え、」
そこでようやく
困惑と驚きの混じったような声を出す。
それと同時に、勝手に体が動いた事に自分自身でもビックリした。
「……な、なにしてるんだよ」
カッコよく助けるなんて出来るはずもないので、落ちないように体を支えてからそう尋ねる。
見たら分かるのに。
「やめて」
俺の質問には答えず、
気を抜いていれば手を離していたところだった。
「……なんで」
「私がいなくなったところであなたには関係ないでしょ」
彼女は長い髪が風でなびくのを片手で押さえて言う。
「親が悲しんだらどうするんだよ」
「親は私が死のうが何とも思わないよ。毎日のように殴って、死ねとか暴言吐いて。そんな親が私の事を心配するわけない」
「……友達とか、」
「私がいじめられてるの、知ってるでしょ」
「…………」
言葉をすぐに返せなくなって、俺は下を向く。
つまり、学校で彼女に居場所は無い。
いじめられているのは知っていた。
大々的にやるものだから、恐らく先生も気付いている。
なのに、誰も止めようとしない。
俺もその一人だった。
「私がいじめられて、本気で嫌がって、吐き気もして、苦しんでる時は助けないで、飛び降りようとしてる時だけ……、なんで止めるの……」
「……それは、」
「それとも何。人の命を助けたとか言って、ヒーロー振りたいの?」
「ちが――――」
「ほんっと最悪! どいつもこいつも。クズしかいない。なんでいじめたりするの? なんで誰も助けないの? そんなに私をいじめるのが楽しいの?」
大人しそうな見た目をしている
いや、大人しそうな見た目しか出来ないのかもしれない。
どうせ髪型を変えただけでもイジられるのだろうから。
「……ごめん。言い過ぎた」
さっきまで怒鳴っていた
「……え、?」
「出来ないよね。助けるなんて……。そりゃ、誰だって対象にはなりたくないもんね」
「…………」
「とにかく、私はもう飛ぶ。面倒事に巻き込まれたくないなら早くどこかに行きな」
悲しそうな、今にも泣き出しそうな顔をして、彼女は言った。
「死のうとしてるの止められて、嬉しかったよ」
無理やり作ったような、ぎこちない笑顔を浮かべて、彼女は後ろを向いた。
そして――――。
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