第43話 ディズニーの失敗を分析する、大きな意義

 ディズニーの「ウィッシュ」ですが、大爆死したと巷では有名で、さらには主人公より敵役ばかりが話題になって、最終的には公式までが敵役アピールで宣伝する、といった体たらくに陥っています。


 創作に関わる者は誰も他人事じゃないこの件。あのディズニーが記念すべき映画で大コケという前代未聞な事態を引き起こしたというのは、まさしく、今世紀最大級の事件なわけです。


 何が悪かったのかが気になりすぎて、観る予定もないのに情報を漁っている始末です。(私にとって映画に行ける機会はもはや貴重なのでコケた作品に使いたくない)


 皆さん配慮してストーリーとか詳細が伏せられているんで、全貌を知ることが困難でしたが、なんとか探り出しました。そして幾つかのポイントを発見しました。


 実際に見たわけではなく、あくまで他の方の感想をベースに考察を組み立てていますので、間違いや思い込みはいつも以上にあると思います。それ込みで、与太話として聞いてください。



 まず、敵役のマグ王なんですが……詳細が知れると奇妙な点が幾つかあることに気付きました。皆さん口を揃えて、「そんな悪いことはしてない!」と仰るわけです。


 ある方の考察では、これは「支配者層vs服従層」の物語だ、と分析しておられました。なるほどその見方が正しいような気がします。少なくとも、制作陣はそういう考えで作ったように思えます。


 でも、私が気になったのはアラジンとの比較です。ジャファーが敵役でした。


 彼と比較してみて欲しいんですよ、やってることは同じレベルだと思います。ジャファーは王様に催眠術を掛けて王女と結婚して国を乗っ取ろうとした、という罪状。もしかしたらマグ王より軽微かも知れません、罪状としては。


 国家簒奪とシビリアンコントロールとではどっちが重罪ですかね。


 その口ぶりに、王様を補佐して支えてきたというニュアンスがありましたから、サラッと流されてはいるものの、実績も同程度こなしていると思われます。ちゃんと国の運営はしてる、餓えさせたり、戦争に走ったりはしてない、という感じです。


 敵としての表現は同じ程度なのに、大きく差が開いてしまった、この二人の違いはどこにあるのか……


 ビジュアルですね。(ドキッパリ)



 そして、無理やり他にも違いを見つけるのならば、主役のアラジンの人物造形かと思います。アラジンは自分を「善人だと主張しない」です。


 これ不思議なモンで、「俺は賢い、」と言ったら頭が悪い奴だと認識されるし、「俺は誠実だよ、」と言えばよほどに不実なヤツだなと思われます。人物は台詞で主張したことの逆を受け取られ、行動で答え合わせをされるという感じです。


 アラジンは悪党ぶることで逆にチャーミングさと善良さが自然に目を引くことになりました。行動でもこれらが裏付けられています。


 比べてウィッシュの主人公…彼女は、運動家を表現したと制作陣が発表してますんで、世の運動家がふつうに言われていることがそのまま彼女の評判になってます。


 ひと言で言うなら「大言壮語」。意味は、「実力もないのに大きなことを言う」


 その部分プラス、「聖人ぶっている」「偉そうに説教」というのが鼻につくレベルだったんじゃないかと思います。説教というのは、ドキュメンタリーだと真摯に聞くことが出来るけど、フィクションでやられるとムカつくんですよ。「口だけ」の最たるものになってしまうからだと思ってますが。


 このヒロインは理想主義で、だけど理想主義者ってのは「押しつけがましい」という特徴があって、これがフィクションと合わさると致命傷で……


 むしろ、この組み合わせって日本だと「こじらせた悪役」の造形ですよね。漫画とかにゴロゴロといるタイプと思います。自分の正義を振りかざすばかりで相手の都合を考えられない、という、すごくポピュラーに多数描かれていると思います。


「こじらせ女子」という描かれ方になってしまったのかな、とかも思います。空回りとか、周りは解ってくれないとの被害妄想とか、それっぽい特徴が聞かれます。


 ヒロインの話題ってのが本当に無視というかスルーされていることが多くて、マグ王の話題には事欠かないのに、て感じなんでこの辺の考察はかなりアヤフヤです。彼女のお友達なんか皆無ですよ、情報。誰も興味がないみたい。



 だけど、日本では非常に盛り上がる作品として受け止められたと思います。考察のし甲斐があるんだと思います。残念ながら制作陣の込めたメッセージなどはガン無視のようですが。


 独りよがりが目立つために、マグ王の本来の悪行が霞んでしまったんでしょうか。


 創作をする側の人間として、この作品の失敗を分析することはとても有意義と思いました。ディズニーですからね。ハリウッドですから、アンチョコの類いがあったにも関わらずの失敗ということなので、その意味は非常に重たいです。


 そつの無い映画を作り続けてきたディズニーだからこそ、この作品を調べる価値は計り知れないと思います。

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