第33話 「理解ある彼くん」解説にひたすら感心しました

 ある動画で、「女性向け「なろう」の定番のひとつ、『理解ある彼くん登場で自動的に幸せ』」とかいう言葉が紹介されていて思わず噴いたんですわ。(笑


 巧いこというなぁ、て。


 主人公は自分の立場に関して、何一つ行動を起こさず、諦めの境地でいて、そこへ突如ハイスペ彼氏が現れ、すべてを解決してくれるタナボタ展開ってヤツが女性向け人気作の一角を担っているんですが、それを指しての言葉でした。さらには、この手の作品は「ヒロインが無能なのはデフォ」と一刀両断。(笑


 た、確かに。とか、ヘンな笑いが出てしまいました。


 さらに畳みかけるように、鋭い指摘が続き、「この手の無能ヒロインというのは自信もないので、ハイスペ理解ある彼くんの愛の言葉さえ否定しまくる」みたいなね。そう言われたら、そういうの多いな!と、目からウロコな指摘でした。


 でもこれはホラ、「何の取り柄もない無価値な私でも生きてていいですか」というものすごく深いテーマが直結してるヤツじゃないですか…。だから、もうちょっとこう、手加減と言いますか、そのぅ、とか思いながら観てました。


 そしたらそれに関してさらにね、すごく大きな矛盾を突いてきたんですよ。


 女性ものの鉄板設定「何の取り柄もない無価値な私でも愛してくれる?」というヤツには、よくあることですが「無価値と思っていたけど実は価値があるんだよ」という後付けの隠し球設定が追加されたりするけど、それは矛盾してるんだ、という指摘。


 だって、「価値など関係ない」というスタンスのはずのハイスペ彼氏が、実は後付け設定の「実は価値があって」というのが目的なんじゃないの?という疑問が生まれかねないよね、と。


 ヒロイン側から見たら、彼くんに何も返してあげられないと思っていたところが、実は大きな価値があってそれで彼くんが助かる、てのは一見だと良いように見えるけど、それは同時に、「価値がなくても愛される」を自ら崩してしまうことに繋がるっていうさ。「やっぱり無価値はダメなんじゃん、」というメッセージになりかねないというか…。


「自分には価値があるはずだ」という願望と対立しちゃうんですねぇ、「価値がなくても愛される」っていう願望は。しかも、価値が勝ってしまうと、結局は否定したいはずの「無能はダメなんだ」を強く推してしまうという…


 これ、落とし穴だなぁ、と。




 やっぱり人様の出している批評というものは勉強になります。

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