道説く

深川我無

第1話 道


 「全ての道はローマに通ず」


 ラ・フォンテーヌが言った言葉です。



 剣道も、柔道も、空手道も、茶道も、華道も禅にも道場があり、道場とは道を説く場所です。


 どの道も極めればひとつの真理に辿り着きます。


 


 道場とは入口の違う様々な道から、ひとつの真理へと向かうための場所です。


 キリストは私が道であると言いました。


 ブッダは往き往きて彼岸を渡れと言いました。


 両者とも人が往くべき道を説いています。


 往き往きて、彼岸に辿り着くためには、激流で身を清めなければならないと、ブッダは言います。


 ヨルダン川を渡り、約束の地に入ることも同様です。


 私達が望む場所に向かうための道中には、かならず身を清めるための激流があります。


 困難や忍耐、痛みを伴う激流です。


 当事者にとって、それは荒れ狂う濁流ですが、頑固な心の汚れを洗う清らかな流れでもあります。


 自分に定められた道を往くことが人生です。



 その中で起きた出会いと別れ、喜び悲しみ、古い自分との決別、そして再生。


 そんな道を往く人が描く物語が持つ深みと感動は、きっと計り知れません。

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