第25話 作戦開始
そして、その日の深夜。
日付は変わり、兵が寝静まっている頃。
「――よし。全員、馬に付けた
バレる事なく敵陣深くにある
山の方面から馬の
ここから見る限り、知らない家紋が刻まれた鎧を身に纏う兵士が紛れている。
どうやら、新しい指揮官が到着してしまったようだ。
しかし戦功を奪い合う既存のラキバニア王国兵も多数確認している。
一晩如きで、その溝が埋まったとは考えにくい。
素晴らしい連携や指揮系統が機能するとは、到底思えないな。
「騎兵のおっちゃん諸君。改めて言うが――これは
俺の言葉に居並ぶおっちゃん共は――死を覚悟した目を向けている。
誰1人、
このままで終われるかという悔しさと、ここまで時代を作って来た、おっちゃんの誇りを感じる。
「狙うは青い光が灯る、敵の
潜んでいる関係上、誰も声は上げない。
だが――同行しているエレナさんを含め、誰も彼もがやる気に満ちた瞳だ。
作戦と、通り抜ける道順も皆の頭に叩き込んである。
おっちゃんとは言え、何度も実際に自陣で演習をすれば――身体に染み付いて覚えるのだ。
「――敵に感知されぬよう、火打ち石で火矢を灯してください! 魔法は決して使わずに!」
大なり小なり、魔法を使えばつむじ風のような
つまり、音より分かりやすく敵に気取られる。
これは
この世界は魔法での戦闘が発達したが故に、原始的な火矢での
「
そうして全員を馬に乗せる。
流石に、山に300近い
だが敵は、こんな陣の深くに奇襲が来るなど想定していない。
言ってしまえば――
見張りが敵襲と確信して防備を固める動きを完遂される前に、燃やしきって見せましょう!
ここまでの敵の動きを見るに、だ。
おっちゃんの
「――総員、突撃ぃいいい!」
「「「うぉおおお!」」」
「おっさんを舐めるなよ、小童共がぁあああ!」
俺の声に合わせ――馬を駆り山を駆け降りる。
「ゾリス連合国の若造が、調子に乗るなよ!」
「ジグラス王国の、子供の未来を――我らが護るのだ!」
「ほれ! 小僧共、腹を空かして家へ帰れぇえええ!」
俺とエレナさんを先頭に敵陣へ攻め入り――灯った青い光へ向け、味方のおっちゃんたちが火矢を飛ばす。
「な、なんだと!?
「敵襲だ! 全員、起きろ! 武器を持てぇえええ!」
はははっ!
遅い遅い!
俺が忍び込み――大切な食糧や軍需物資の貯蔵庫の明かりには、エレナさんの魔力に反応する鉱石を混ぜてある。
要点だけを狙い魔法師団へ徹底的にサポートをさせる我々を、急な対応で止められるものか!
「お、おのれぇ! よもや
「バーゼル伯爵! 危険です!」
「危険を
おお。
敵陣から、何とも
寝起きで急いだからだろう。
見事な造りの鎧を中途半端な状態で着込んだ指揮官、彼の後ろには同じように、
さぞかし、名のある将なのだろう。
バーゼル伯爵と聞こえたが……。
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