紫陽花
津島林檎
第1話
西田さん、もう少しね。
晴海がこちらに笑いかける。
なので私も、うん。楽しみだ。
と、言ってみせる。
隣に居座るのが、嬉しくも、おぞましくもあるのだ。だって、
うん、そう、彼女はアイドル。
アイドルと言っても、それこそ地下アイドルだが。だかしかし、地下アイドルのファンと言うのは熱烈なファンが多い。゛地下゛というだけであるのに、手が届くかもしれない。
そう意地汚い、傲慢で、自信過剰な、自分が悪魔と契約した奴隷のように、人参をぶら下げた馬ののうに、こちらからしたら大層惨めで、泥にまみれた豚のようにみえているのだ。決して莫迦にしているわけではない。私からしたら、゛アイドルの傍にいる立場゛からしたら、汚く思えてしまう。というだけであって、茶化して見世物にしたいわけでもない。ましてや、見世物にするなんて、なんて恥、恐怖といったらいいものか。そんなことを考えているうちに、目的地についた。
チェックインする前に、パフェが食べたい。
晴海が試すように言う。
そういえば車内でチラシを見ていた。そこから見つけてきたのだろう、まったく。目ざとい。そう思いつつも晴海のあざとさには勝てない。
じゃあ行こう。
そう言って歩き始めた。
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