VRMMOのチュートリアル役NPCおじさん、バグった聖剣とゲーム知識で無双する。サービス終了したゲーム世界で、バーチャルアイドルと勇者を仲間にして世直しの旅に出ます。
第6話 リリム・メッチャボウクン・シュトロノーム18世
第6話 リリム・メッチャボウクン・シュトロノーム18世
村長と共に中央広場に向かうと、数人の農夫がそれぞれにクワや鎌を手にして女の子を取り囲んでいた。
「ええい、縄を解け! ワシさまをどなたと心得る! ワシさまは魔王の娘、リリム・メッチャボウクン・シュトロノーム18世だぞ! 一同、頭が高い。控えおろう!」
「…………なんて?」
縄で縛られて広場に転がされていたのは、自称魔王の娘だった。
リリムと名乗った女の子は、赤髪
背が低いわりに胸は大きくて、体を縄で縛られており胸部が無駄に強調されていた。
服装は、胸元や太ももが露わになっている露出の激しい魔法戦士風の衣装だった。
防御力があるのかわからない、肩パッドや籠手を身につけている。
なにより目立つのは、頭に生えている小さな二本の角だった。
人間と同じ姿をして人の言葉を使う”角つき”は上位モンスター【悪魔族】の証だ。
俺の知る知識でも、角の生えた人間族は存在しない。
つまり……。
(こいつ……本当に魔王の娘なのか?)
『リリム・メッチャボウクン・シュトロノーム18世』なんて名前の悪魔族は聞いたことがない。名を騙っているとしても、悪魔族はダンジョンのボスよりも遙かに強い力の持ち主だ。
素っ頓狂な自己紹介のおかげで間抜けな空気が流れたが、俺は気を緩めずに無銘に手をかけた。
「みんな下がってくれ。こいつは危険な魔物かもしれない」
「えっ? こんな小さな娘がですか?」
「ああ。人も魔物も見た目に寄らないってね」
俺が村長や農夫を下がらせると、リリムは我が意を得たりとばかりに目を輝かせた。
「おお! ワシさまに恐れをなすとは、おぬし話がわかるな! 名はなんと言う」
「タクト・オーガンだ」
「タクトだな。よいぞ。刻んだぞ、その名前。
「微妙なポジションだな……」
「さあ、早く縄を解け
リリムは縄で縛られて転がされているくせに、
いつの間にか下僕にされた上に、仲間意識が芽生えていた。
(相手のペースに飲まれないようにしないとな……)
俺は気を引き締めながら無銘をリリムの鼻先に向けた。
「にゃ、にゃにをするっ! ワシさまを魔王の娘と知っての
「おっと! 仲間を呼ばれると厄介だ。その口を閉じてもらおうか」
「ひぎぃ!」
剣先をさらに近づけると、リリムは顔を青ざめさせて口をつぐんだ。
けれど、まだ文句を言い足りないのか声を震わせながら懸命に言葉を続ける。
「や、やめろ~。ワシさまを怒らせるとアレだぞ~。なんかすっごいことが起きて、おぬしの頭がドーンばん! グチャってなるぞ~」
「おまえは幼稚園児か」
魔王の娘だから子供なのは確かなんだろうけど。
「うるさいっ。いいから言うことを聞け。おぬし、ワシさまの威光にひれ伏して忠誠を誓ったのではないのか!?」
「忠誠を誓った覚えはない。むしろこの場で処分する気マンマンだ」
「なぜ!?」
「自分で魔王の娘と名乗ったんだろうが。それともさっきのは嘘か?」
「嘘ではない! ワシさまはリリム・メッチャボウクン・シュトロノーム18世。魔王の娘系アイドルとして絶賛売り出し中だ!」
「どこにだよ……」
リリムと話をしていると、どうにも気が抜けがちになる。
リリムは自分が討伐対象だということに気がついていないようだ。
俺は改めて無銘を向けて、リリムの立場についてお説教を始めた。
「魔物は人食いのバケモノなんだ。自分たちに襲いかかってくる危険な隣人に手を差し伸べられるほど、人間側に余裕はない。だから殺す。これは自然のことわりだ」
「ふん! それくらいは知っておる。ワシさまは人食いのバケモノを束ねる魔王、その娘なのだからな」
「だったらここで首を切られても文句は言えないよな?」
「ま、待てっ! しかしそれは、おぬしら現地人の常識であろう。ワシさまは”
「イレギュラー?」
「左様。おぬしみたいな髭づらのおっさん【NPC】に言ってもわからんと思うがな」
リリムは人を小馬鹿にしつつ、不遜な態度を辞めずにもう一度名乗りを上げた。
「ワシさまの名前は、リリム・メッチャボウクン・シュトロノーム18世。【ログドラシル・オンライン】を宣伝するために生まれた、めっちゃプリティーなバーチャルアイドルだっ!!!!」
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